デートに誘いました
「初音ちゃんがお嫁に来てくれるなら安心だわ」
「ごめん母さん、何のことを言っているかわからない」
優斗たちの母は昔から気分屋で会話が自己完結しているところがある。話が飛んでいることはいつものことだが、今日は優斗の頭が痛くなるほどの内容だった。
「最近初音ちゃんが料理を作りにきてくれてるでしょ?この料理の腕ならいい奥さんになれるっておねえちゃんと盛り上がっていたのよ。なんたってママ、料理は得意じゃないでしょ?」
「確かに母さんは家事よりも仕事って感じだよね。だからといって……」
「初音ちゃんなら昔から知ってるし。ママ、昔からこの娘が娘だったらって思ってたのよね~」
(あっ、完全にテンション上がって話聞いてない)
母をしばらく喋らせ、優斗は肝心なことを話すことにした。
「そもそも僕は初音ちゃんと付き合ってすらないよ」
「あらっ?片思いなのに足しげく通うなんてかわいらしいわ。そうだわ。今度お礼にデートに行きなさい。」
「なんでお礼で僕がデートに行くのさ!?」
「お礼は相手が喜ぶことをしてあげるべきよ」
「僕の意思の確認をしてよ!?」
「お料理おいしかったわよね?」
「……うん」
「あたしたちの分までお礼をしておいてね」
有無を言わせない迫力で母に押し切られた。2万を渡され、ちゃんともてなすよう念押しまでされた。
「デート?初音ちゃん喜ぶわ」
姉は完全に初音の味方だ、話をすれば当然そうなる。
「いや、そうじゃない。そんな色気のないデートを僕から誘うことの方を悩んでるんだけど」
「あらあら」
「だって付き合ってもいないのに親公認だよ!?お金まで渡されたし!」
「これで服か何か買って、はい終わりなんて酷いことはしないわよね?」
流石に優斗はそのくらいの常識は持ち合わせている。しかし異性として見れない相手をデートに誘うことに自体に気が引けた。
「優斗が初音ちゃんを好きになれば全部解決するんじゃない?」
「政略結婚じゃないんだよ?まじめに考えて」
「いやだわ、冗談よ」
(姉に話したこと自体が間違いだったのか?いや、こんな話を姉抜きで進める方があとで怖いし)
優斗に選択肢はなかった。
「そうね、思わせぶりなことを言うのは気が引けるわね。ならこういうのはどうかしら?」
おいしいイタリアンレストランを聞いて気になっていたからお礼にどうかと誘う。それとその店は繁華街にあるから買い物に付き合う。優斗は無難なその案に従うことにした。
メールを送るとすぐに初音からは返信がきた。
『それってデートっていうことですか!?』
『そんな大層なものじゃないよ。いつもおいしい料理を作ってくれるお礼がしたくてね』
『いいえ、あたしがデートと思えばデートなんです。いつもよりも気合入れていきます!』
『エスコートできるようがんばるよ』
「ちゃんと現地で待ち合わせにしなさい。そっちの方がデートらしいでしょ?」
「わかったよ。できることはするよ」
待ち合わせは九坂駅の東広場に土曜の昼の2時に決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます