天外消失
☆STEP 1
カーと並ぶ密室の大家、クレイトン・ロースンの傑作短編。先ほど、並ぶと書いた舌の根も乾かぬうちならぬ、ペンのインクも乾かぬうちに書くのもなんですが、やはり作品数の違いというのは大きい。そのせいかマニア層以外での知名度はカーに及ばない印象です。なにしろ、クイーンよりもクリスティーよりも長編作品数が多いのがカー御大。まぁ、そのぶん、アレな完成度というか、キュートな出来ばえというか、腰が抜ける(砕ける?)トリックというかの作品もあるにはあR……もにょもにょ……
その点、ロースンはどれも粒揃い。ちょっとマニア好みすぎるきらいのある作品もありますが、というか、この「天外消失」がそうかもしれません。ミステリにトリックを求めるというか、奇術的なものを求める人々には大好物な要素がこれでもかと詰まっています。なにしろ、ロースンは本物のマジシャンでもあるのですから。
電話ボックスからの人間消失というお話は、確かジュブナイルで読んだような気がしますが、あまりに……H……これはネタばらしになりそうなので書きません。
では、英訳作業に入りましょう。
これまでにないパターン。漢字だけ。それも四文字。
解いていくカギは「消失」でしょう。確か【banising】だったような。
そして「天外」。「この世の外」を想像してしまうのは同じロースンに「この世の外から」というタイトルの作品があるからでしょう。天外消失という漢字四文字を噛み砕くと「天外へ消失する」と「へ」と「する」が入るのでしょう。すると【banising】ではなく動詞っぽく【banish】となりそう。あるいは「天外への消失」と「への」が入るのかもしれません。【to】か【for】でしょう。きっと【to】と【for】の違いを真面目に勉強したら、それだけで一冊書けるほどなのでしょう。いや、案外、ズバッと「発想として明確にココが違うのです」と知っている人は知っているのかもしれませんが。
うーん、時間がない。「外」は【out】だとしても「天」がどうにもこうにも。
☆STEP 2
というわけで……
“Banishing Out of World”
……で、どうでしょうか?
無理やり「天外」を「世界の外」と解釈し【world】、「世界」という言葉を持ってきました。
☆STEP 3
正解は……
“Off the Face of the Earth”
……でした。
さすがに「世界」、【world】は風呂敷を広げすぎたようで、正解は「地球」、【earth】でした。ひっかかるのが【face】です。英和をひきましょう。
お、“Get out of my face!”で「
じゃましないでここからでていけ」という例文が出てきました。さらに読み進めると“on the face of the earth”という表現で「[最上級などを強めて]この世で、世界で」というものが出てきました。きっと、これでしょう。
さらに【off】をひくと「~から(離れて、はずれて)」が出てきました。副詞としては「出発」の含みで「(ある場所から向こうへ)」という意味も出てきました。
調べたところ、いわゆる目張り密室でカーと競作した「この世の外から」の原題が“Out of this World”でした。どうもこのタイトルが頭のどこかにあったようです。
ちなみに「消失」は【disappearance】や【consumption】。【banish】は「追放する」の意味でした。
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