偽証するオウム

 ☆STEP 1


 弁護士ペリー・メイスンものからチョイス。E・S・ガードナーのこのシリーズは作数が多いせいか「これはずば抜けてよい」というのが選びにくい。どれもこれも安定してそこそこ楽しめますよ、という感じでしょうか。筆者(別名義A・A・フェアではなく私ですよ)の熱量がそんなぬるさなので大傑作を見逃している危険がありそうで怖いのですが。

 では、英訳作業に入りましょう。




 ☆STEP 2


 またしても登場した「入試・ビジネス・トラベル英語の教材に登場しなさそうなミステリ用語」シリーズ。今回は「偽証」。「証言する」という動詞が出てこないので、ここは大いに譲って「嘘をつく」にしましょう。【lie】か。

 そして「オウム」です。たぶん、ミステリに登場する鳥の仲間ではカラスについで多いのが「オウム」なはず。やはり、人間のしゃべる言葉を覚えて復唱できるという特性がミステリ的に扱いやすいのでしょう。

 オウム、オウム、オウム……

 タイムオーバーです。




 ☆STEP 2


 仕方ないので妥協に妥協を重ねてこうなりました。


 “Lied Bird”


 これじゃ「嘘をつく鳥」です。確かに「偽証するオウム」は「嘘をつく鳥」だけど、というご不満の声が聞こえてきそうです。そして、困ると韻をふんでごまかそうとする癖があることもわかりました。




 ☆STEP 3


 正解は……


 “The Case of The Perjured Parrot”


 でした。


 定型的なタイトルのつけかたがいかにも多作の作家という感じ。

 あーそうだ、そうだ。【parrot】だ。オウムね、オウム。ちなみに英和で【parrot】を引くと「饒舌・貪欲・温順の象徴」なんて意味もありました。「オウムのようにくり返す」「意味もわからずまねる」という意味も。「人の受け売りをする人」という意味まであったのには驚きました。

 でもって【perjure】は「(主に法廷で)偽証する」とありました。わざわざカッコ書きで「主に法廷で」とあることが気になります。ただ虚偽の証言をするというのではなく、法律用語に近いのかもしれません。



☆おまけ


 メイスンものに多いのは「なんとかプラス動物」のパターンが多い気がすると思っていたので、いい機会と調べてみました。『吠える犬』『門番の飼猫』『びつこのカナリヤ』『偽証するオウム』『弱つた蚊』『黒い金魚』『ストリップ・ガールの馬』『なげやりな人魚』『嘲笑うゴリラ』『色つぽい幽霊』。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る