三人の名探偵のための事件
☆STEP 1
ちょっと渋めのセレクトかと思いましたが、調べたら2017年に文庫が復刊で出ているようなので取り上げました。作者はレオ・ブルース。ミステリ好きならばモデルというかモチーフがすぐにわかる三人の名探偵たちによる推理合戦が楽しい快作です。
英訳作業に入るなり、問題にぶち当たります。「名探偵」って英語でどう言うの? 「探偵」は【detective】というのは知っています。これこそ一般的にそんなに認知されてもおらず、受験英語やビジネス英語、トラベル英語の単語集や例文には出てこなそうな単語ですが、ミステリファンは知っている。そんな言葉です。
ひとまず、名探偵問題は保留して先へ進みます。「三人」は【three】プラス「名探偵の複数形」でしょう。「事件」も推理小説好きにはおなじみです。【case】ですね……なんて偉そうに書きましたが、『毒入りチョコレート事件』の回をお読みになってくださったかたには噓とまではいかなくてもつよがりだということはバレていることでしょう。
さて「~のための」ですが、これは【for】ではないかな、と。日本語の「~のため」は複雑で、その特性を用いて仕掛けた……このへんにしておきます。楽しみを奪わないためにも。現時点で「あぁ、アレね」というかたや、いつか「あぁ、コレか」というかたがいらっしゃれば嬉しいです。
話がフラフラしているのは「名探偵」が思いつかないから。制限時間もあるので、無理にでも引き出します。つまりは「とてもすごい探偵」ということですから、「頭脳明晰な」とか「偉大な」とか「優秀な」といったあたりの言葉を冠にすればいいわけでしょう。
「天才」は【genius】。なぜ胸を張って書けるかといえば私が天才だからではなく、今も使っている辞書がgeniusという名称だから。
しかし、どうも天才は違う感じがします。【nice】や【good】だと弱い。ここは「偉大な」という【great】あたりが妥当でしょうか。
☆STEP 2
というわけで……
“The Case for Three Great Detectives”
……で、どうでしょう?
☆STEP 3
正解は……
“Case for Three Detectives”
……でした。
うーん。
あれだけ時間をさいた名探偵問題がなかったことにされているような……
それとも、【detective】そのものに単に探偵ではなく名探偵という意味合いがあるのだろうか、と首をひねる。確かただの「捜査官」程度の意味だった気がするんだけれどなぁ、と辞書を引きます。もちろん、和英で「名探偵」の項目はないでしょうから、英和で【detective】をひきます。うん、「探偵、刑事」でけっして名探偵ではない。ダメもとで和英でひくと「名探偵」そのものはなくても「名―」はありました。「偉大な」という意味で【great】「高度の専門的知識・技量のある」で【expert】、「花形の、スターの」で【star】。
まぁ、登場する三人の探偵のモデルはわざわざ「名」をつける必要のないほど「ザ・名探偵」なので、そういうことなのかなぁ、という結論に落ち着きました。
☆おまけ
ただやはり「名探偵」は気になるので他に「名探偵」がタイトルにある作品を探しました。本棚からサタスウェイトの『名探偵登場』を見つけ、原題を確認すると【Escapade】。英和でひくと「乱暴ないたずら」や「脱出、脱線」の意味とのこと。
あぁ、なんかふーディには出るわ、コナン・ドイルは出るわ、お化けは出るわというガッチャガッチャしたそんな話だったな、と納得するも「名探偵」が英語でなにかの謎は解けず。
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