第4話 お化け屋敷
「吊り橋効果っていうのを知っているかな? 恐怖や緊張からくるドキドキ感を、一緒にいる異性への恋と勘違いするという心理効果だね。これにより惚れ薬の効果が促進されるかもしれない。というわけでい行くよ」
「いやいや、渚様マジ勘弁してください。むりむりむりむり、かたつむり。俺がお化け苦手なの知っているだろ」
「はっはっはー。安心したまえ、お化け何て非科学的だし、万が一いたとしても、ここで死者は出ていないから無害だよ」
「そういう問題じゃねーんだよなぁ……」
彼女についていった俺は商業施設の一角にあるお化け屋敷の列へと連れていかれた。確かに周りはカップルだらけだし、いつの日か、恋人ができたらこういうとこいって、「お化けこわーい」とかいって抱き着かれたいなとか渚に言ったことあるけどさ。
「きゃあ、まーくんこわーい」
「大丈夫だよ、君は俺が守る」
「お化け屋敷ひさしぶりだねー、楽しみ。でも、置いてかないでね」
「当たり前だろ。俺達はずっと一緒だよ」
「現世に未練をのこし霊魂……魔女たる私のしもべにはふさわしいわね」
「ああ、そうだ。万が一危険があってもお前の騎士である俺が守ろう」
「ふむ、なるほどね……情報通りカップルだらけだね。ここの雰囲気なら巧もそういう気持ちになるんじゃないかな? どうだい、惚れ薬は効いてきたかな?」
「いや、全然効果ないわ……」
当然ながら周りはカップルだらけである。みんないちゃついてやがる。いや、一部頭がおかしいやつもいたが気にしないでおこう。これは彼女との実験だけれど、はたから俺らもカップルに見えているのだろうか? ふと横を見ると渚は観察するようにカップル達を眺めていた。
「きゃあ、巧君こわーい」
「え? 何、無表情に棒読みで叫びながら抱き着いてくるのやめてくれない? まじで怖いんだけど。お化けでも乗り移った?」
俺が考え事をしていると、渚が棒読みで叫びながら抱きついてきた。おそらくカップルの真似をしたんだろう。香水だろうか、蜂蜜のような甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。というかこいつの裸を風呂場でみてしまった時も思ったが結構大きいな……俺は柔らかい感触ににやけそうになるのを必死にこらえる。自分がチョロすぎて嫌になる。
「ふむ……それでも効果はあったようだね。動悸がすこし激しくなってるよ。そろそろ惚れ薬の効果は出たんじゃないかな? どうだい、私に惚れたかな?」
「いきなり抱き着かれたら、びっくりして心臓も早く動くわ!! てかなにやってんの?」
「わからないかい? 君の鼓動が早くなっているか確かめているんだよ。もしも、私に君が惚れていればはやくなるだろうからね」
そう言って俺の胸元に耳を当てて心音を聞いている渚に俺はどう反応していいか迷う。いきなり何をするんだこいつは!? いくら幼馴染だからって距離が近すぎない? そりゃあ好きな人にそんな事をされたらドキッとするわ!! 俺の鼓動は相当はやくなっているだろうな……
「次の方どうぞー」
「おっと私たちの番みたいだよ。さあ、行こう」
「おい……ちょっと……」
店員さんが呼ぶと彼女は、俺の手を握りながら進んでいく。彼女のぬくもりが、俺を幸せな気持ちにしてくれる。
こんな風に手を繋いだのは小学校以来で……俺は自分がどきどきしてしまうのを自覚する。大体さ、惚れ薬なんかなくてもとっくに惚れてるんだよ。分かれよな。
「さあ、行くとしようか」
「ああ、てか、近くないか?」
「こうしたほうが惚れ薬が効きやすいだろうからね。実験のための努力というやつさ。君が嫌だったら遠慮するけど?」
「いや……このままでいい……」
「協力的で助かるよ、
そう言う彼女は更にピタッと体をくっつけて歩く。その姿をはたから見たらいちゃついているバカップルにしかみえないだろうよ。俺がどきどきしながらも扉を開けて……
「ギャー!!」
しょっぱなにお化けに出会い開始五秒で絶叫をした。その後の事はあまり覚えていない。
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