第257話ユージーが言うことには
「どうだ! イケメンだろぅ!!
俺は生まれ変わったのだ!
これなら念願のハーレムも……イテイテ、ベルロンドやめろ、顔をビンタするな!」
ウフフと恍惚した顔でユージーの顔を打つベルロンド。
ユージーは腹を押さえていた手で自分の赤くなった頬をさする。
すでに血は止まったらしい。
回復力も人間を辞めかけているということか。
ベルロンドも一転変わって、ユージーの頬を優しくさする。
それにユージーはまんざらでもない顔。
自分でぶっておいて優しくさするなど、なんてひどいマッチポンプだ。
ほんとナニを見せられているのだろう?
「……彼は少し性格が変わった気がします」
聖女シーアがユージーに聞こえない程度の声で俺にボソリと呟く。
「そうなのか?」
「ええ、以前はもっと偏屈で色欲を前面に出した気色悪さがありましたが……」
ふむ、良くも悪くも男は女で変わるということか?
それとも魔神化という死地に近づいて心根でも入れ替えたか。
想像でしかないが。
俺たちの疑念をよそに、嬉しそうに微笑むベルロンドに今度は頬をつねられながら、ユージーは聞かれもしないのにこれまでのことを語りだした。
わりと重要なことを。
ユージーは裏で邪教集団……教導国では、
結果で言えば、それはユージーを利用するための仮初のものだったようだったが、それでもユージーは教導国から出国して少しの間、その新女神転生派と行動を共にしていたらしい。
俺にまったく記憶はないが、俺に斬られてなんとか生き延びた後、前から繋がりのあったその新女神転生派に保護されたことがきっかけだとか。
俺がユリーナに執着していることをパールハーバーに伝えたギョロ目の男。
それがユージーだった。
今はギョロ目というほどではない、浅黒い肌で野生味のあるイケメンだ。
パールハーバーが大公国で起こしたタイミングとほぼ同時期。
新女神転生派はユージーを連れて教導国である実験を行った。
転生して世界を救う力を手に入れようとした。
ユージーは知らないようだったが、それはまさしく魔神化の儀式。
結果的にいえば、これは失敗に終わった。
幾人かが魔神化を試みたが、成功したのはユージーただ1人。
他は巨大モンスターになったり、黒い化け物に変じ、ユージーも理性を失った。
ユージーがムカついて倒したという巨大モンスターは元はその新女神転生派の1人だったというのだ。
聖堂騎士団がその場にいたのは、新女神転生派の一派だったということだ。
ただベルロンド
それが聖女シーアを狙っていた教導国の一派だったのだろうが、今回の教導国訪問ではすでに国を出ていたか排除されたか。
はたまた騒動に紛れてメラクルたちが潰してしまったかのどれかだ。
ともかくその新女神派だが、サワロワをモンスター化させたように魔神化の技法を持っている。
だがそれでも魔神化には魔導力の
ユージーもまたアークマシーンらしき存在を見たそうだ。
さしずめ神の存在を見たという感じか?
だがユージーは俺が見た女神とは違うモノを見たようだった。
「美しい女神?
触手の巨大な化け物がか?
ハバネロ公爵、キサマの趣味は変わっているな?
ユリーナ大公姫は美女だと聞いたが、ガセだったか」
ユージーがそう言ったので危うく殺しかけた。
それを全員に止められて、最後にメラクルチョップにより俺は正気を取り戻した。
なぜか全員がボロボロで木々は薙ぎ倒され草は刈られ、辺り一面荒野になってた。
まあ、気のせいだな。
それはともかく、俺が眠っている間に出会ったユリーナに似た女神とユージーが魔神化するときに見たモノとは別ということか。
それはどういうことだ?
世界の脅威、アークマシーンは2つあるということか?
1つでも滅びるというのに、それが倍だ。
どう抵抗しろと?
「どう思う?」
黒騎士の後ろに隠れていたおかげで、比較的俺からの被害のなさそうだった聖女シーアに尋ねる。
「……わかりません。
ですが、アークマシーンが2つあるというより、ゲームが黙示録以外にも残っていたか、もしくは別の応用技術でしょうか」
俺は再度、ボコボコにされたユージーに説明を促す。
ユージーが語るにはこうだ。
最強になりハーレムを作る夢のために転生の儀式を受けた。
教導国の外れにある聖堂地下に隠されていた何かの装置に繋がれ、変な液体と魔導力の塊を飲み込み薬を嗅がされた。
新女神転生派の連中が失敗だ、とか逃げろとか、他の実験体は巨大モンスターに変わってしまった、とか叫ぶのを遠くで聞いたそうだ。
ここ最近の大型モンスターと巨大モンスターの発生の始まりは、新女神転生派が関わっていたとみて間違いないだろう。
それに誘発される形でモンスターが活性化され、今の大型以上のモンスターの頻発ということだ。
碌でもない話ばかりでムカついた。
巨大モンスターが可愛い村娘を潰そうとしてたのでムカついた。
聖堂騎士団がユージーを殺そうとしたのでムカついた。
ベルロンドは実験のことまでは知らなかったらしい。
急なモンスターの出現に動揺していたところに聖堂騎士団の中にも新女神転生派の手の者がいたらしく、何人かがユージーに襲いかかった。
それをきっかけにして聖堂騎士団全員が狂気に襲われたかの如く、ユージーに殺到した。
しかし返り討ちにあった、と。
そこから暴れ回ったユージーはへたり込んで怯えた表情の美女……ベルロンドが可愛かったから、激しくキスしたら意識が戻ってきた。
ファーストキスを奪ったのだからと、ベルロンドに付きまとわれつつ。
行き場なくフラフラしてたら、俺たちが来て今ココ、だそうだ。
おい、キスのあたりから話おかしいだろ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます