第243話終演に向けてのプロローグ後
王都で王太子とは様々な話を協議した。
その悪魔神に関することもそうだ。
王への即位のあとは積極的に王国も悪魔神対策に乗り出してくれる。
遅い……と言いたいが、ゲーム設定の記憶では、魔神が本格的に出現し被害をもたらしてからようやく国が重い腰を上げたことを思えば、随分早い。
そもそも国や貴族が神話や伝承だけを元に動き出すことはできない。
そういうのはそれこそ教導国などが物理を伴う
今回の動きだしも要塞型巨大モンスター被害が世界各国で深刻化しているがゆえに、ようやく各国が対応に乗り出したのだ。
それと時を同じくして、女神の因子を持つ者を生け贄に悪魔神を封印してきた歴史と、大公国崩壊とを関連付けて情報を流した。
急な大公国の崩壊の影に人は理由を求めた。
過去、俺に苦しめられていたとはいえ、ここ最近の大公国の内情は悪くはなかった。
それが突然、前置きもなく崩壊したのだ。
その裏に証拠と共に悪魔神復活の話と邪教集団の陰謀論を乗っけた。
これは真実であるだけによく広まった。
さらに大公国を切り取る王国貴族たちもそれを声高々に大手を振るって乗り込んできた。
かくして事態は動き出す。
俺が王都に来たのはその流れを後押しをするためだ。
王国が動けば他国もさらに本腰を入れて動く。
権力があるといえども王国の中のただの公爵だけでは世界など救えない。
大きなうねりの中で一人一人が立ち上がり、世界が動き出してこそようやく世界は救えるのだ。
それでも間に合うかどうかは厳しいだろうが。
王太子とはそのようにいくつかの重大な情報をやり取りしたわけだが、その中でも一際気になったのは、魔神の噂についてだ。
「教導国と共和国の国境付近で魔神が出現したという話だ」
真相は不明。
教導国側の村と街、それぞれ1つずつが壊滅。
出動した聖堂騎士団が壊滅。
隊長をしていたベルロンドという女騎士と魔神が行方不明。
同時に要塞型巨大モンスターが出現していたとか、魔神はそのモンスターと戦っていて跳ね飛ばされて空を舞っていたとか、もうなにもわからないと言い切った方がマシなんじゃないだろうか。
王太子からも近くに寄るならば情報を頼むと言われた。
無論、
世界全体に関わる話だし、断る話ではない。
元よりここに来たら悪魔神に関わる情報は国のみならず、その垣根すらも越えて共有せねばなるまい。
もしかすると、いいや、間違いなく圧倒的な技術力のあったはずの過去の世界も、人と人とが協力することが出来ずに滅びの道を歩むことになったのだろう。
当然、ゲーム設定の記憶の世界も。
繰り返しの話にもなるが誰か個人だけで、世界を救えると思うなど
魔神出現の噂もあったので王国を出て、俺たちは教導国に
そこで聖女シーアによりのちにヘレオンの宣告と呼ばれる出来事が行われた。
ヘレオンとは女神からの祝福を伝える大聖霊の名で、最強魔剣ガンダーVはその聖霊を信仰する村に安置されている。
教導国に戻り、トルロワ大司教と再会した聖女シーアは今後の世界の行く末について、女神教を通じ宣告を行った。
そこで教導国を巻き込む大騒動が起きたが、メラクル率いるポンコツ隊の
教導国の古い言葉をもじってスゴイッシュ・ポンコツ(すげぇぜ、ポンコツさん)、なんて言葉まで生まれた。
なお、その言葉の成立に俺が関わっていることは秘密だ。
対抗勢力の力の象徴たる聖堂騎士団が、その少し前の魔神騒動で壊滅していたことが大きかったのもある。
そうして大聖霊ヘレオンが降臨したと呼ばれる日。
教導国中心部大聖堂の大広間にて聖女シーアの宣告が行われた。
曰く、世界は長い刻を経て女神の力で封印されていた悪魔神が復活しようとしている。
各地で出現する要塞型巨大モンスターはその
やがて悪魔神と共に魔神が復活する。
それは世界を滅ぼす数と力を持っている。
だが恐れることはない。
世界は女神の名の下にそれに立ち向かおうとしている。
王国もすでに動き出している。
教導国もいまこのときから、未来のために立ちあがろうではないか!
簡単に要約するとそういうことを言った。
話の途中に、ポンコツ隊のコーラスとかメラクルの独唱があったりしたのは関係ない。
マジで関係ない!!!!
そんな
なので教導国の大聖堂の一室にて休憩をしているところではあるが、そろそろ次へ行こうと言っているのだ。
「しっかし大将、元気過ぎだろ……。
休んでるの見てねぇけど?」
次から次へと重要な物事を話し合った。
その1つ1つが重要で下手をすれば今後10年は大きな火種になる可能性もあった。
そうなれば間近に迫った悪魔神復活時には、致命的な傷になる可能性があったり、そんな話ばかり。
ぐったりする面々と俺の差は慣れというのも大きい。
それ以外にも冒険者ギルドへの通達や公爵領からの連絡や情報の整理、やるべきことも多かった。
俺にしかできないことも多いのでそれなりの疲労も感じてはいるが、元より公爵という立場はそういう重大な話し合いはいくつもあった。
どれもがそこで暮らす人の運命を左右する重大ごと。
上手くいったものもあれば、上手くいかなかったことも。
その帳尻合わせにいくつもの命を奪い罪を背負った。
もう少し上手くやっていれば。
それ以上があのときの自分に出来たとは思わないが、それでも願わずにはいられない。
そう思えばこそ、無理もしようというものだ。
……まあ、ちょっと感覚が麻痺している気もしなくはないが?
なんていうのか、ナチュラルハイってやつ?
徹夜明けで疲労困憊なのにテンションが無意味に上がってしまうやつ。
「……それはともかく。
次行くぞ、次!」
俺の主張にメラクルが床に伸びながら叫ぶ。
「休ませろと言ってるのよ!
この激辛唐辛子!!」
俺は早く我が妻ユリーナに逢いたいんだ。
ああ、我が妻ユリーナ。
なんと甘美な響きであろうか。
もう1人の妻メラクルはそこで伸びてるけど。
そうかと思えば寝そべったままでメラクルはポンコツ隊に呼びかける。
「ええい!
みんな〜!
この唐辛子を取り押さえるわよ!」
「はーい!」
「へーい!」
「ほーい!」
「ほほほ〜い」
「ふぁ〜い」
そう言ってメラクル、コーデリア、サリー、キャリア、クーデル、ソフィアの6人は寝転がったまま尺取り虫のように周囲から俺に迫ってきた!!
や、やめろー!!!!!
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