第183話本物の隊長ならば!
疑いの目を向けるキャリアたち。
またしても珍しく戸惑うメラクル。
キャリアたちは指をメラクルに突き付けたまま、さらに告げる。
「そうか……、まだシラを切るというの。
ならば私が貴女の正体を暴いて見せよう!」
「うそっ!? キャリア、あれが誰だか分かったの?」
キャリアの宣言にクーデルが驚く。
サリーはアゴに手をやり、よく観察するようにメラクルを頭の先から尻尾……じゃなかった足の先まで見つめる。
「やるわね? 私には隊長にしか見えないわ」
「私も……、かなりリアルな幽霊説に1票」
ソフィアに至っては幽霊説。
それなら、隣でその幽霊メラクルと普通に話している私はなんなのよ?
「ねえ? 姫様。
私の部隊ってあんなポンコツだった?」
「え……、あー、ローラどうだったけ〜?」
自分でも目がうろついてしまうのが分かる。
我関せずと近寄って来ないローラを巻き込む。
ローラは離れてたのに、と盛大にため息を吐く。
「わざとらし過ぎますよ、ユリーナ様。
貴女共々、いつもあんな感じだったわよ、メラクル」
「うそっ!?」
逆に何故、そこに気付いてなかったのかなぁ〜。
不思議でならない。
メラクルらしいけど。
「あの〜、そろそろ話続けても良いですか?」
クーデルが恐る恐る私に尋ねる。
話続けてレッドのところに行くのが遅くなるのは嫌だ。
なので私は考えるふりをして全員を促した。
「あー、そうね。
どちらにしても移動しながら話しましょ」
「それもそうね!
ハバネロがパールハーバーとやり合ってるし、何かあったら大変よ!」
そう言いながら、メラクルの方は話も聞かず率先して駆け出す。
「ちょちょっと、待って下さい!」
ソフィアが走り出すメラクルに必死に追い縋る。
「うるさいわねぇ、急いでるんだから走りながらにしなさいよ、で?」
そう言いつつもメラクルは早歩きにまでスピードを落とす。
急ぎたいのでこれが限度だろう。
「もう……そういうところ隊長とそっくりですね!
役作りし過ぎですよ!」
クーデルが頬を膨らませメラクルに抗議すると、メラクルはわざとらしく前髪をファサッとかきあげる。
「フッ、生まれながらの名女優とは私のことね」
「あれ? ねえキャリア〜?
このポンコツな反応、やっぱり隊長じゃない?」
サリーが隣で早歩きするキャリアに問い掛ける。
キャリアだけはまだ疑いの目だ。
「なんでよ!
名女優ってポンコツじゃないじゃない!」
「いやぁ〜、そういう返しがなんというか隊長のポンコツぶりが滲み出ているというかぁ〜」
ソフィアもいつも通りメラクルに接するのと同じ態度。
「ムキー! あんたたち覚えてなさいよ!」
ねえ? 貴女たち……、そこまでいつも通りのやり取りしてて疑う余地ある?
もう本人だって分かってるよね?
えっ……、まだ!?
早歩きしながらコホンと、わざとらしく咳払いをしてキャリアは口を開く。
「私たちは数々の合コンという修羅場をメラクル隊長と乗り越えてきました」
合コンって修羅場なんだ。
そう思ったけど、話の腰を折らないように私は黙っておいた。
放置したとも言う。
「それでもメラクルタイチョーはモテなかった」
「余計なお世話よ!」
「恐らく公爵家に行ってもモテない振りは変わらなかったはず!」
周りの公爵家の人たちまでもうんうん、と頷く。
それを見てローラはひきつった顔でメラクルを見てしまう。
「メ、メラクル……、貴女、公爵家『でも』何をやらかしたのよ……」
「ローラ!? でもって何! でもって!!」
早歩きしながら、公爵家の面々は生温い笑みで優しくメラクルを見守ってくれている。
……何かやらかしたのね。
そんなメラクルを見ながら、キャリアは役者のように両手を広げ横歩き。
そのまま役者じみた素振りで、何かを思い出すように天井を見上げるけど、横歩きなので当然前は見ていないわけで。
曲がり角……あっ。
キャリアはゴンッと盛大に壁にぶつかる。
凄い……コレが、メラクル隊……。
私は改めて彼女たちの凄さを思い知った。
私は今日、また一つ賢くなった気がする……気のせいだけど。
それでも、キャリアは何事もなかったかのように話を続ける。
「…-…そう、モテなかった。
だけどそれには大きな理由があったのです」
キャリアの言葉にクーデルたち3人が同時にうんうんと頷く。
「嘘!? どんな理由!?」
逆にそれにメラクルが食いつく。
自分で理由が分からないらしい。
独特(ポンコツ)なところはあるが、メラクルは美人だし性格も悪くはない。
相手をするのは大変かもしれないけれど、モテない致命的な理由にはならない……はず。
「……っていうか、隊長のニセモノさん。
隊長よりも美人じゃないですか?」
サリーが首を傾げながら、メラクルの顔をジーッと見る。
それにソフィアも同意する。
「そうね、肌艶が良いよね」
「え? そう?
食べる物が変わったしねぇ〜。
流石公爵家よ、料理の質が違うのよ」
メラクルが自分の頬をぷにぷにと触る。
「それってメラクルさんが特別扱いされているからじゃないんですか?」
「エルウィン、余計なことを言うな」
アルクがエルウィンと呼ばれた茶髪の青年の言葉を遮る。
私がメラクルをジーッと見ると、メラクルが思わずといった感じで目を逸らす。
「……怪しい。
まさか、メラクル」
メラクルが慌てて否定。
クーデルも私と一緒にジーッとメラクルを眺める。
「ななな、何モナイヨ!?
ほんとよ?
ほら、クーデル。
ビスケットあげるから信じて」
メラクルはポケットから取り出したビスケット(ワイロ)をクーデルへ渡す。
……そのビスケットずっと持ち歩いてたの?
クーデルは警戒するでもなくビスケットをモグモグ。
「フルーツビスケットですね、これが美の秘訣……」
「あー! クーデル!
知らない人に物を貰っちゃいけません!
隊長、私にも一つ」
「私にも」
サリーとソフィアは更なるビスケット(ワイロ)を要求。
……貴女たち、確信犯よね?
こうして3人がメラクルの罠にハマり、ビスケットにより懐柔された。
残るはただ1人!
その最後の1人のキャリアが動いた。
ダダダっとキャリアはダッシュして先行したと思ったら、私たちの前に立ち塞がりメラクルにビシッと指を突きつける。
「ジャジャーン」
クーデルがモグモグとビスケットを齧りながら、キャリアの動きに合わせて効果音を言葉にする。
「何故、タイチョーがモテなかったか!
それはメラクルタイチョーは壮絶に理想が高過ぎたのよ!
貴女が本物のメラクルタイチョーだと言うならば。
メラクルタイチョーが求め彷徨っていた理想の相手に求める条件を答えよ!!!
……あっ、ユリーナ様とローラさんは答えを言ったらダメですよ?」
……それってアレよね?
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