第124話勇者計画
「いや、
「あんたでも知らないことがあるのね」
メラクルさん?
俺を何だと思ってるの?
神じゃないんだよ?
ユリーナは女神だよ、だからなんだというわけでもないが。
「教導国で秘密裏に行われた計画だけどね。
流石に王国の方にまで情報はいってないみたいだね。
勇者、聖女、剣聖、そして賢者を作り出し来たる黙示録の刻に対抗しようとする計画。
5人目に聖騎士が居るんだけど、それは教導国の聖堂騎士団から選ばれる。
実際は大公国の聖騎士が居るから、聖堂騎士団から選ばれた聖騎士は形だけになっちゃうけど。
それに勇者は聖剣プライアに選ばれた人って決まってたから、その候補の候補だけ。
ま、とにかく、それでその作られた賢者が私ってこと」
色々気になる内容だなぁ〜。
茶を飲みながら、聞いた内容を頭の中で整理する。
まだ戦争中だから具体的に情報の確認をしている暇まではないが、終戦出来ればすぐに確認した方が良いかもな。
その中でも、シロネが何故知っているのか疑問な言葉がある。
「……黙示録か。
正統な女神教の国が何故、邪神と関わりのある可能性のある黙示録のことを知っているのか?」
驚いたような顔でメラクルが俺を見る。
ああ、そうか、黙示録が邪教集団と深い関わりがあることは言ってないからなぁ、驚くよな。
サビナとアルクは邪魔をしないように口を挟まない。
ザイードは、すっげぇシロネにしがみ付かれてイチャイチャされてる。
頬をすりすりされたり、ゴロンと甘えられたり。
それをしかめっ面をしながら、されるがままのザイード。
「なあ、ところで俺、何見せられてるんだろう?」
サビナもアルクもメラクルも同意するように頷いて、更には当事者のザイードまでも助けを求めるように頷いている。
「恋人同士の逢瀬だから突っ込んじゃダメだよ、公爵様」
こちらを見ずにザイードに甘えるシロネがサラッとそう言ったので。
「なるほど、そうか。
それはシロネの言う通りだ、続けてくれ」
俺はシロネの訴えに深く同意した。
俺の言葉にザイードは肩を落とし、サビナとアルクはそれとなく目を逸らし見ない振りをする。
「それで納得するんだ……」
メラクルが呆然として呟く。
当たり前だろ?
俺もユリーナとイチャイチャするのを邪魔されたらキレる。
ユリーナは逃げようとするけど。
切ない……。
「黙示録については、女神教の失われた教典の一つにそんな存在があったらしいよ?
それが具体的にいつなのか、何が起こるのかとかは私は聞かされてないよ」
女神教と邪教に繋がりがあるのか?
いいや、歴史のどこかで関わりがあったとしても、女神教こそが邪教集団と敵対している。
邪教集団に帝国みたいに内部に入り込まれることがあったとしても、流石にそれで邪教集団に影響を与えられるほど、女神教総本山の教導国の者たちも馬鹿ではない。
「散々、言われたのは滅びかけたこの世界の最後の聖域であるこの地を守るために、お前たちは存在するのだ、てね。
女神教の狂信者じゃないんだから、そんな言葉をありがたがる訳ないよね。
勇者計画の代表の司祭はただの変態エロクズ野郎だったし。
集められたのは、見目麗しい年頃の少女ばかりよ?
世界を救うとかいうお題目よりも、自分の欲望を満たす事ばかりご執心の本物のクズ」
権力の集まるところには、自ずとそういう輩が上に立つ事はよくある。
何故そうなるかは簡単な話。
権力や欲望に真っ直ぐに突き進む輩は、一般の人が恥だと思うことも平気な顔して脇目も振らず情熱的に突き進むからだ。
事なかれで、そういう奴を放置しておくと碌なことにはならないが、人はそんな奴に関わっているほど暇ではないので放っておく。
するといつの間にか、出世を邪魔されなかったそういう奴だけが上に居たりする。
困ったもんだぁー。
それでもそいつが世界を救えるというのなら、それでも良い。
ユリーナに近付いたら斬殺してやるが。
それに最後の聖域か……。
遥かな過去、世界は邪神、いや悪魔神に滅ぼされた。
世界の人々は99%以上が死滅し、僅かに残った人々はこの地域に逃れた。
古い古い忘れられた伝承。
今でも王国に限らず全ての国に国名というものがないのも、生き残った人々が団結して一つの世界であろうとする女神教の教えからだ。
その割に今も昔も人同士で争ってばかりだけどな。
人はそう簡単に変わらないってことだ。
「結局、シロネは何故王国に?
教導国からの逃亡か?」
そう尋ねると大人びた顔でシロネは目を細める。
そうすると不思議と彼女に色気のようなものも見え隠れする、そんな表情。
色々あった、そう表情で語っていた。
若い少女のような見た目だが、意外とそこまで子供でもないのかもしれない。
「半分正解。
正確には勇者計画は頓挫したの。
計画者の変態エロ司祭が殺されて、聖女様が聖剣プライアごと行方不明になって。
それから勇者計画が頓挫して、警戒が薄くなったから国を抜け出して。
あっちへふらふら、こっちへふらふら。
お金も無くなって、野垂れ死にそうな中で、やっと辿り着いた町でまさかの帝国軍の襲撃!
でも、そこで運命に出会ったの……!」
ぽぅ〜とテントの上を見上げながら、乙女チックに。
それから、ねぇ〜と満面の笑みでシロネはザイードに呼びかけると、ザイードは困った顔。
その反応に嬉しそうにシロネはザイードの身体をまさぐりまさぐり。
「おい! やめろ、こんなところで!」
ほうほう、ではこんなところでなければ良いと?
「こんなところじゃなければいいの!?」
俺が思っていながら口に出さなかったことをメラクルが反応。
おい、そっとしといてやれよ。
なので俺はアルクに振り返り指示を出す。
「あ、アルク。
この2人同じテントの中に放り込んであげて?」
うんうん、優しさ優しさ
「おい!? 公爵!?
火に油注いだ上で木をくべるなよ!
あ、いえ、公爵……様」
ザイードが俺を呼び捨てで訴えるが、サビナとアルクがギロッと剣をチラつかせて殺気の篭った睨みを効かせる。
うんうん、俺も忘れかけてたけど不敬だからね?
ちゃんと『様』ぐらい付けようね?
そもそも不敬の極みの駄メイドの存在があったから、俺もそんな立場である事をすっかり忘れていた訳だが。
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