第65話反乱軍マーク・ラドラー
これには流石に俺も頭を抱えた。
「閣下!? どうされました!」
「ど、どうしたの!? 何か冷たい物でも拾い食いした!?」
それを見たサビナとメラクルが慌てて俺に声を掛ける。
メラクル、お前は冷たい物を拾い食いしたことがあるのか?
それはどんな物だ?
どうしたものか、どうすることも出来るか!
なんで主人公が反乱軍の
あっれぇ〜、ゲーム設定にそんな裏設定あった〜?
……ある訳ないなぁ。
だとしたらどういうことだ?
「モドレッドを呼んでくれ……」
いずれにせよ、今は迂闊にラビットの前に顔を出す訳にはいかない。
そもそも反乱軍と公爵本人が直接会うなんて、殺してくれと言っているのと変わらないから当然だが。
モドレッドも失っては困る貴重な貴重な人材なので危険に晒したくはないが、反乱軍と的確に交渉を出来る者など他に居ない。
見た目チャラい貴族の兄ちゃんだが、実に有能なのだ。
その有能さ故に、モドレッドの兄は彼を殺したくて仕方がないのだ。
いつでも自分の立場をすげ替えられるかもしれないという危機感故に。
この辺り実に貴族アルアルである。
貴族は家を維持することが第一。
親子の情も家族の情も家の後に付いてくるものであり、覚醒前のハバネロ公爵もそのことを重要視していた。
だからこそ、あれだけユリーナにキツく当たったのだと悪夢を通して気付かされた。
ちなみに今の俺は言うまでもなく、ユリーナ優先である。
それはそれで王国の公爵としては、かなり大問題であるが。
いやいや、もちろん他がどうでも良いと言うわけではないよ?
ユリーナとの穏やかな日々を夢見る好青年なだけで?
こんなに頑張っているのに、未だに嫌われ者で暴虐不尽な噂がずっと付きまとうお茶目な状況なのはどういうことだ!
納得いかないぞ!
俺の心を癒すために、今すぐユリーナを嫁に寄越せ!
ちょっとその噂の所為で苦労をかけることになるけど!
チクショー!!!
だから内務卿のガーゼナル侯爵にパワーディメンションを渡す時も『え? あんた何言ってんの?』って顔でとっても警戒されたし、未だに人材の勧誘も警戒される。
三羽烏もモドレッドもやむに止まれず俺のところに来ただけで、何も問題が無ければ来なかったのだ。
人の噂って怖いよ〜?
好き勝手言いやがるから。
ちょっと格好良いところ見せただけで、嫌われ者が人気者になったりなんかしないよ〜?
特に俺なんか公爵だから嫉妬とか物凄い、もう超物凄い。
もし俺がユリーナと婚約出来ず他の人とユリーナが婚約していれば、その婚約者を暗殺しようと思うぐらいには嫉妬する。
それほどユリーナを婚約者にしていることは万死に値すると思う。
はっはっは……、じゃあ、仕方ないか。
いやいや、現実逃避し過ぎた。
「お呼びでしょうか? 閣下。」
チャラい見た目が成りを潜めると、ただの有能なイケメン。
超優良物件。
なお、メラクルにアプローチしているので女の趣味は悪い!
いや、メラクルも見た目は良いんだよ?
中身が驚異的にポンコツなだけで。
敬礼してこちらの反応を待つモドレッドに反乱軍について話をする。
「反乱軍と交渉をする必要がある。
実際に帝国との戦争中に背後でうろちょろされるのは面白くない」
「……反乱軍を叩き潰すのは本意では無い、ということですね?」
こいつ、チャラい見た目で損をしてないか?
……いいや、その見た目を理解して利用しているんだな。
これはまた、随分掘り出し物だったかな?
「そうだ。
今は状況が不透明過ぎて話す訳にはいかないが、やがて俺たちの大きな力となり得るかもしれない。
……無論、公爵からの交渉を蹴ってなお争うことを選ぶテロリストたろうとするのであれば、即座に徹底的に叩き潰すことになるがな」
ゲーム主人公……ラビットがマーク・ラドラーなのであれば、主人公はラビットではない可能性もあるというのだろうか?
主人公チームの大きな支援者の1人がマーク・ラドラーであり、彼の支援で後半は部隊を維持して追加の仲間も入って来る。
しかしながら、マーク・ラドラーはゲーム設定でも『あの街』の生き残りであり、ハバネロ公爵を恨み反乱軍を新たに組織した。
ある意味でハバネロ公爵の罪を形にした存在と言えるかもしれない。
マーク・ラドラーとハバネロ公爵。
反乱軍と支配側。
主人公と敵役。
丁度良い対比と言えなくもない。
並び立たないというなら潰すしかない。
モドレッドの言う通り、潰したくない。
理由は勿論、ユリーナの味方となるからだ。
だが、ここでマーク・ラドラーがテロリストとなってでもハバネロ公爵憎しであるならば、ユリーナへの危険が高まる。
俺の最大の急所はユリーナなのだから!
でも何故かな、こんなに婚約者ユリーナへの愛を
愛の囁きが足りないからだな!
前回は邪魔者が沢山居たからな。
「ちょっとユリーナへ愛を囁いて来る」
そう言って、立ち上がると全員に止められた。
解せぬ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます