第37話その名は赤騎士!?①
『公爵さん、聞こえるか?』
大公国の端の1番大きな街から更に進み、田舎と言える長閑な田んぼが広がる地域から数日、とある町に入ったところで黒騎士から通信が入った。
『聞こえるぞ? 通信が届くということは近くに居るんだな?』
道具を使うことである程度の距離なら通信が可能だが、それでも街をいくつも越えて届くわけではない。
やがては中継を繋いで遠くまで連絡が通じるようにしなければ、帝国戦はなんとかなっても対邪神戦は苦しいだろう。
ゲームでも主人公たちは多数の犠牲を払い、ほぼ単独の特攻によりなんとか討伐したぐらいだ。
こうして、世界はボロボロになりながらもなんとか邪神討伐に成功する。
そもそも帝国が覇権を求めたのも、世界を一つにして邪神に当たろうとする狙いであり、皮肉なのかそれを阻んだ1番の立役者はハバネロ公爵だったりする。
まあ帝国が勝利していたら、その過程で主人公チームがどうなったか分からないから、そのまま邪神に滅ぼされていた可能性もあるわけだが。
さて、そんな中、黒騎士は現在、ユリーナたちをサポートするため主人公チームに接触を図る手筈になっていた。
ゲームでもこの辺りで、『偶然』黒騎士に遭遇するのだ。
ユリーナたちは邪神調査で飛び回り、黒騎士もまたどういう理由か、邪神について調べているのだから、遭遇するのは必然かもしれない。
『聞いてた話の通りなら、少しヤバいかもしれない。
俺だけでは手が足りなさそうだ。
援軍を回せるか?』
『どういうことだ?』
ゲームでは序盤だ。
そこまでピンチになる展開ではない。
何より邪神はまだ復活しておらず、モンスターもそこまで活発というほどでもない。
少し前に比べれば、かなり活発的と言えるだろうが。
……もちろん、ゲーム通りに現実が進むわけでもないので目安でしかないが。
『お姫さんの部隊5人しか居ない。
何か事が起こっても、村を守り切るのは少々厳しいと思う。
大型モンスターに襲われると仮定したらの話だが……』
村が大型モンスターに襲われるのは未来予想みたいなもので、黒騎士には伝えておいたが半信半疑な表情をされた。
そりゃそうだ。
第一、俺も必ずその通りになるとは分からない、既に幾らかはズレがあるのだから。
確か……。
最初の村防衛シナリオで、無理をせず粘っていれば邪神集団に操られていたモンスターが引いていく流れだ。
この時はまだ邪神集団の動きも表立ってないから、大判狂わせはそうそう起きない、はず。
ちなみに邪神集団とは、そのものズバリ邪神を信仰する危険な集団である。
邪神も創造神の別の姿であり、その在り方はうんちゃらかんちゃら。
モンスターと共存共栄を目指し、それを邪魔する者は云々カンヌン。
ゲーム後半で教祖らしき人が出て来て邪神を復活させて、邪神配下の要塞型大型モンスターのスモーキーにぺちって感じに潰されてた。
まあ、邪神からすればそんな言い分関係ないよね!
帝国のオーバル宰相が実はその幹部の1人で、帝国の侵攻目的の一つが邪神の敵である聖騎士の大公国を潰すことでもあった。
オーバル宰相戦の辺りからユリーナ含む主人公チームが、本格的に邪教集団と戦っていくことになる。
ゲームでの主人公チームは味方もそこそこ居たが、敵はハバネロ公爵を含め巨大な存在ばかりである。
しかし状況に応じて援軍が来たり、工夫を凝らせば乗り越えれたりとそこはゲーム仕様である。
現実も是非、そんな感じで乗り越えられるようにお願いします。
……ゲームでも少しミスって誰か死んだり、運が少し悪いだけで全滅とかザラにあるけど。
はい、ここで話が戻すと黒騎士にもユリーナたちの現在のチーム構成なども伝えており、異常を感じて通信してくれたようだ。
有難い。
そう、この段階で5人は少な過ぎるのだ。
ゲームではこの段階で小隊規模10人以上いたはずである。
『メンバー分かるか?』
『お姫さんと公爵さんが気にしてた青髪、男女の騎士っぽいのが2人、緑髪のやたら綺麗なヤツの5人だ。
公爵さんの予想では、もっと騎士っぽい奴らが居るはずだろ?
部隊を分けて別行動してれば別だがな、近いところには居なさそうだ。』
緑髪……?
大公国系は緑髪はあまり多くない。
黒髪や青髪、落ち着いた髪色が多い。
緑髪と言えば共和国系だが……この段階で誰かチームに参加してたかな?
綺麗と言えば、ガイア・セレブレイトだが、能力Sのあの男がこんな序盤で加入してはバランスブレーカーだ。
いっそそれだったら助かるが、それでも村防衛はどちらかと言えば、手数が大事で強さよりも数が必要だ。
前方からの敵だけ支え切れても、他の方向から村を襲われてしまう。
村を見捨てる選択肢はない。
その村には邪神調査の重要手掛かりがあり、それが入手出来ないとなると……まあ、困る。
つまり、なんとか村を守り切らないことには、何というか、ユリーナたち主人公チームもまた。
詰んでますやん、ということである。
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