第27話モンスターの脅威②
もちろん説明しようにも説明出来ません。
よって、押し切ります。
「どうでも良い。
早く渡せ。
それともモンスターに踏み潰されて終わりたいのか?」
まあ、無くても負けないけど。
「よっぽど凄いもんなんだな、そのパワーディメンションってのは」
黒騎士が感心したように言う。
そうでもない。
能力Eが能力Dに上がるけど、能力B以上はパワーアップするが能力がランクアップする訳ではない。
ただ黒騎士が使うと、大型モンスターでもノックバック効果が付くのでとっても相性が良い。
ゲームシナリオだと黒騎士が正式に仲間になるのは、後半なのでゲーム難易度を大きく下げたりはしないけど。
黒騎士以外では必殺技がパワーアップしたりする訳ではないので、まあ黒騎士用の後半パワーアップアイテムかなぁ。
序盤で取り漏らせばそれまでだけど。
「ほら出せ、そら出せ」
「あんた、何処のチンピラよ……」
むむ!? メラクル、人聞きの悪い。
アイテムは有効活用せねば。
「俺は重要アイテムでも使う時は使う主義だ」
「……まあ、大事に飾って肝心な時も使わないなんて道具も可哀想かもね」
それからメラクルはクレメンスに振り返り、片手を胸に当て聖騎士の礼を持ってクレメンスにお願いする。
「……クレメンスさん、私は聖騎士です。
モンスターから皆を守るのが役目です。
そのために力を貸して!」
メラクルは聖騎士らしい心根のようだ。
そう本来聖騎士とは、来るべき邪神との戦いで邪神やその眷属であるモンスターから人々を護る役目を負うものである。
もっとも、現在は形骸化して国家間の権力闘争の道具に過ぎない。
その理念を守り続けてきたのが大公国で、ハバネロ公爵はその理念を踏み躙るような言動を常からしていた。
お前らは国家戦力の犬なのだ、みたいな感じの言動。
ハバネロ公爵本音言い過ぎ。
もうちょっとオブラートに包まないと嫌われるよ!
嫌われ過ぎて今の状態です。
今のメラクルは聖騎士本来の姿を人々に思い出させるほどの雰囲気を持ち、真っ直ぐにクレメンスを見つめている。
普段のポンコツ娘からは想像もつかない!
クレメンスは少しだけ迷った顔を見せ、何故かトーマスを一度だけ振り返り、そしてメラクルに視線を戻し頷いた。
「分かりました。
私も人から救われた身です。
このパワーディメンションが誰かを救う力となるならば、この力お預けします」
「クレメンスさん……」
感極まったように指ぬきグローブの形をしたパワーディメンションを受け取るメラクル。
聖騎士が今、美女から願いを託された。
誰かを救う力を……。
いやでも、それ無くても別に問題ないから。
あとそれ使うのメラクルじゃないから。
そんな空気の読めない言葉は飲み込み、満足気に笑みを浮かべ頷いておいた。
俺は空気が読める男なのだ。
「お主、人が悪そうな笑みはやめといた方が良いぞ」
「うわぁー、人柄が顔に出るって本当なんだ」
鉄山公にリーア、君たち失礼だよね?
「さあ、時間がないわよ! さっさと行くわよ!」
パワーディメンションを受け取ったメラクルが意気揚々と拳を挙げ皆を促す。
「待てい」
「ぐえっ」
慌てて出ようとするメラクルを襟元捕まえて止める。
「何よ! 早く出ないと町が襲われるじゃない!」
「お前は相変わらず……少しは考えて物を言え」
可愛らしくぶすーっとむくれるメラクル。
はいはい、と手でおざなりに宥める。
俺は接近して来るモンスターの配置や何かおかしな点はないか確認。
それからそれぞれの担当とタッグを組む相手を指示。
「各自、自分の担当を頭に入れろ。
無理して攻めるなよ?
黒騎士は戦闘開始と共に例の必殺技で相手を誘導しろ。
パワーディメンションが有れば出来る。
まあ、お前らは大型モンスター戦は初かもしれんが、問題ない。
俺はモンスターとの戦い方をよく知ってるからな、まあ安心していい。
各々が自分の役割をこなせば確実に勝てる」
カリー、コウ、トーマス、冒険者A〜Dおまけにリーアをメラクルの采配でゴブリナを足止め。
メラクルは守りには強い。
鉄山公とサビナは俺を援護、ミノルタを速攻で沈める。
速攻が難しければ、ゴブリナを1体ずつ受け持ち確実に倒す。
黒騎士は必殺技のノックバックでモンスターが連携出来ないように誘導、状況次第では黒騎士はメラクル達を援護。
全員がポカ〜ンと。
そう言えば、ハバネロ公爵がこういう戦闘指揮を取るシーンは無かったな。
偉そうにしているだけ。
公爵様だから偉いんだけど。
それでもゲーム設定では、ハバネロ公爵は対帝国戦でも指揮を取り戦果を上げており、それなりの指揮の才があったことが
「おいおい、俺は大型相手にしながら他のメンバーの援護もかよ?」
「うるさい黙れ。
お前なら余裕だろうが。
そもそも、町の守りとか考えなければお前1人でも時間をかければそのぐらい討伐可能だ。
パワーディメンションもあるしな」
「言ってくれるねぇ〜」
そう言いながら、色々任されて黒騎士は嬉しそうだ。
まあ、ただの事実だからな。
「閣下……、我々は……。」
カリーたちエリート兵がメラクルをチラッと見て、俺に戸惑ったように声を掛ける。
俺は
こいつらは衛兵アルクとセバスチャンが選別したメンバーだ。
信用……するしかねぇか。
そう心に決めメラクルに声を掛ける。
「おい、メラクル。
あれを見せてやれ」
「何!? アレってナニよ!?」
「お前の言う『ナニ』ってなんなんだよ……。
護りの小刀だよ。
落としたとか言うなよ?」
メラクルはキョトンとする。
「いいの?」
「仕方ねぇだろ。
そうでないとお前みたいな小娘なんて誰が信用するか!」
「酷い!」
ブツブツ言いながら、メラクルは大公国の紋章の入った護りの小刀を見せる。
つまり聖騎士の証。
「なっ!?」
カリーたちが驚きの声を上げる。
そうだろう、そうだろう。
ただの公爵のお手付きメイドかと思ったら、大公国の聖騎士だった訳だから。
盗賊退治にはすでに参加してたから、戦えることは知ってただろうが。
「コレでも大公国で部隊の隊長もしてる。
信じられないだろうけどな」
「信じられないって何よ!
あと毎度のことだけど、なんで知ってるのよ!」
毎度だから、もういいじゃん。
ゲーム知識だよ。
バラさねぇけどな!
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