第2話 ひとりぼっちの王女


私は国王とその妾の間に産まれた子供だった。


私が産まれるとすぐ国王は母から興味をなくし、それを理由に母を嫌う他の王族たちから王宮の隅へと追いやられた。与えられたのは馬小屋にも劣る小さな小屋と朝晩の粗末な食事。


そんな環境でも母は私を愛して育ててくれた。

けして腐ることなく、努力していればいつか王様が認めてくれると信じていろいろな事を教えてくれた。


しかしその母も私が十二歳の時に病気で亡くなってしまった。


母の最期を看取りに来た時、私が母から教育を受けていた事を知った国王は私を王宮へと呼ぶと言ってくれた。

もう少し早くそう言ってくれたなら母は病気にならずに済んだのにという思いもあったが、自分のしてきたことは無駄ではなかったと知って嬉しくも思った。


けれどその日の夜のこと。

次の日に王宮へ移動すると聞いていた私は母と自分の荷物を纏めていた。

少し疲れてうとうとしてしまい、目を覚ますといつの間にか回りは火に囲まれていた。


逃げ出そうにも扉は既に激しく燃えている。

ならば窓からと考え逃げ出そうとした瞬間、頭上から炎に包まれた木材が落ちてきた。


そこからは記憶がない。

目を覚ませば上質なベッドの上で包帯をぐるぐる巻かれていた。


原因不明の家事で小屋は燃えてしまい、私は大怪我をして運び込まれたらしい。

顔の右半分を火傷をしておりその痕は一生消えないと。

火傷は額から喉まで広範囲にわたっておりその影響で喋ることも出来ないと言われた。


国王は医者の手配をしてくれたものの見舞いにすら来なかった。

このままではまた見限られてしまうと思った私は多少無理をしてでも勉強し、知識を詰め込み魔法を覚えた。


国王に――父に見放されひとりぼっちになるのが怖かったのだと思う。


正妃や義母姉に醜いと罵られようと、馬鹿にされようと嫌がらせをされようと諦めなかった。


そんな努力が実を結び、十七になる頃には呪文なしで魔法を使えるようになり国内でも優秀な魔術師として名を上げる事ができた。

火傷や声を治す魔法はいくら探しても見当たらなくて覚えることは出来なかったけれど、努力を重ねた私を父は認め受け入れてくれた。


魔術師としても娘としても誇りに思うと言われて私は素直に喜んだ。


異世界から召喚した勇者と共に、悪しき魔王を倒すという役目を与えられた時もすんなりと受け入れた。

私は父に認められたい為だけに勉強し、努力してきた。

その力で今度は苦しんでいる民を救えるのだと誇らしかった。




だから裏で父が――国王が勇者に私を殺せと命じていたなんて少しも疑わなかった。



なぜ、私が死ななければならないのだろう。

ただ、父に愛されたかっただけなのに。


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