第75話 本音
「引っ越すのか?」
「うん」
「どこに」
「直ぐ隣の家だよ」
「そ、そうか」
「でも、変な感じだね」
「そうだな」
そうしてまた二人、押し黙る。
「大学に行ったらさ、もうお互いに忙しくて会えないのかな」
消え入りそうな声で彼女はうつむく。
否定できないのが辛い。
「俺が……俺なんかが彼氏で本当に良かったのか?」
セクハラばっかりしてきたろくでなしだった記憶しかない。
「うん、だって、ソウタが私の初めてで全てだったから」
「…………正直に話してくれ、俺は最低な奴だろ?」
彼女は即座に首を激しく左右に振った。
「初めて会った時のこと覚えている?」
「あぁ」
「実はね…………あれ、いじめっ子からの罰ゲームだったの」
「…………」
「本当はソウタの事、私、実はよく知らなかった。あっでも好きだったのは本当だよ」
俺は押し黙って続きを促す。
「不思議に思うよね。私、偶然、ソウタがいろんな人に優しくするのを見たの。それがきっかけだった。それから勉強に頑張る姿を見て、身長も高くて、体もたくましくて、目つきは悪いけど、本当は頼れる人だってこっそり観察ていくうちにわかったの。高嶺の華っていうのも変かもしれないけど……憧れ……そう、憧れだったの」
「そうか」
「ねぇ、ソウタからすれば、私はどんな風に見える?都合のいい女?」
「そんなわけっ……っ。いや、最初に告白されたとき、俺は罰ゲームか何かだと思ったし彼女ができたことと、からかうことができたことがとてもうれしくて、可愛くてスタイルがよかったから……都合のいい女だと思ったことが一度もないと言えば嘘になる」
「…………そう」
「けど、今は……今までも、そしてこれからも、俺は君が好きだ」
「!?」
「最初は君の体や顔が可愛くてたまらなかった、でも今は俺の全てを受け入れてくれる君が大好きなんだ!こんな俺には君しかいない、君以外ありえない!」
「本当……?」
「あぁ!」
「嬉しい……っ」
そういって泣く彼女を俺はそっと抱きしめてその後、こみ上げてくる愛情に任せて強く抱きしめる。
カナタは俺の胸に体を預けた。
夕日が祝福するように二人を照らす。
そうして俺たちの長いようで短い高校生活はあっという間に終わった。
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