第58話 バレンタイン 【カナタ視点】

 私はソウタの妹ちゃんと一緒に私の家でチョコレートをつくることにした。


 妹ちゃんは女友達に、私は……その彼氏に……。


 うぅ……改めて考えたら恥ずかしくなってきた。


 けどバレンタインに何も渡さなかったらきっとソウタのことだからがっかりするだろうなぁ。


 彼が悲しそうな顔をするのなんて見たくないなぁ。


 「カナタさん!」


 「ん、なぁに?」


 「どんなチョコ作るの?お兄ちゃんから何か言われた?」


 「い……一応……」


 私は赤面する。


 ソウタのバカぁ。


 私のリアルおっぱい再現チョコが欲しいなんて……とてもじゃないけど、言えないよぅ。


 でも、つくらないと、彼がっかりしちゃう。


 よし、頑張ろうッと。


 「もしかして、お兄ちゃん、また変なことお願いした?」

 

 「まぁ……否定はできないかな」


 「さいって~~」

 

 「でも、慣れているから」


 「うわぁ、カナタさん、お兄ちゃんにべたぼれだよ」


 「アハハ」


 乾いた笑いが漏れる。


 否定できないなぁ。


 私は、頑張ってチョコを作る。


 うんしょ、うんしょ。


 リアルなおっぱいチョコができた。


 そして、恥ずかしい振り付けをした後決めポーズをして妹ちゃんに写真をとってもらう。


 ちなみにキメポーズはハートマークを指で作る。


 もちろん私の顔は真っ赤だ。

 

 「カナタさんって実はバカなんじゃないの?」


 写真を撮った妹ちゃんはいう。


 「な、なんでそういうこというのおおおおおおおお!?」


 「だって、その……ねぇ」

 

 「うぅううううううう、もうお嫁にいけない」

  

 私はしゃがみ込んで両手で顔を隠す。

 

 「いや、お兄ちゃんがもらうでしょ」


 「そうだけどおおおおおおおお」


 そして私は彼の家にバレンタイン当日に行って渡す。


 「言われたものは持ってきたか?」彼は無駄にかっこいい顔で言う。

 

 「……うん」


 「そうか(にやぁ)」


 私は泣きそうになる。


 ソウタはチョコを食べようとして不意にその手を止めて話しかける。


 「カナタってさぁ」


 「?どうしたの、早く食べてよ!ただでさえ恥ずかしいんだからぁあああ」


 「痴女?」


 「なっ―――――」


 「だって自分のおっぱいチョコに萌え萌えキュンキュンダンスするとか俺、ほとんど冗談のつもりだったんだけぶほぉおおおお!?」


 私は彼の頬に鉄拳を食らわせる。


 もう知らない!


 でも――――やっぱり好き!


 ばぁか、ばぁか。


 ソウタなんて、いいいいいっだ。


 私は子供のように口を「い」の字にして威嚇するのだった。

 


 

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