第40話 一日彼女に尽くしてみた結果wwwの裏話 その2【カナタ視点】
高校入学してから間もない5月のことだった。
その頃の私は、性格が根暗で自分に自信がないからいじめられて、いつも一人で帰っていた。
そんな生活に飽き飽きしていた。
それはそうと、私が彼を好きになったきっかけはほんの些細なことだった。
1年と2年の合同の時間。
体育の時間で空手をやるとき、一人の背の大きい男子生徒に目がとまる。
空手の試合で勝ち、汗を拭いては、他の男子生徒とだるそうに喋るその姿がとても素敵だった。
それから、彼の声と顔が忘れられなかった。
気づいていたら、私は、彼のことを見かけてはこっそり後をつけて、好きな本や好きな食べ物を知って、それと一緒のものを買った。
今となってはちょっとアレな行動だったけれど、仕事と学校の両立で身も心もすり減っていた私にとってはそれがささやかな幸せだった。
しばらくして、彼がおばあちゃんをおぶったり、電車で席を譲ったり、困った外国の人に英語で道案内するなど本当に優しい人だなぁっとわかった。
ある日のこと、彼と一緒に距離を歩いていると、彼が頭をかきながら、こちらに近づいてくる。
「あぁー、その、なんだ。もしかして俺のことつけてる?」
「ご、ごめんなさい」
「まぁ、君みたいな可愛い女がついてくるのは、それほど嫌じゃないが、やっぱりくすぐったくてな。俺なんかよりもっとかっこいいアイドルを追っかけたほうがいいぞ?」
「………………」
「どうした?」
「い。いえ、すみませんでした」
「お、おう。わかればいいんだ」
わ、私が可愛い!?
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい――――。
私は口から変な声が出るのを堪えるように口を押えて速足で帰った。
※ ※ ※
それから、彼を追いかけるのはやめた。
でも、彼の低い声や、しぐさが頭から離れない。
仕事にも支障が少しづつでてきた。
そのあとも彼とは不思議な縁があった。
私が変な人に声をかけられたり、ナンパされたり、子供にいたずらされたりしたときは助けてくれた。
すごい人だなぁっと思った。
ぼうっとしていて、ちょっと運転のあらい車にぶつかりそうになった時も、手を引いて助けてくれた。
雨の日は、傘を貸してくれた。
彼の手はとても大きくてあたたかかった。
彼の顔、匂い、体温、手、鍛え抜かれて大きな体。
優しくて、正義感があって、ちょっと人見知りだけど困った人を放っては置けないかっこいい性格。
私にした優しさを誇らずにすぐに忘れてしまう謙虚な性格。
頭だって悪くない。
彼はめったに笑わないし、笑うときはたいてい本を読んでいる時だが、そのこどもっぽい無邪気な笑顔やしぐさが体の大きさと相まって胸がざわつく。
いやちがう、胸がキュンキュンする。
これが恋なのだと私は、気づかざるを得なかった。
けど、勇気をだして告白することができなかった。
だから今となっては罰ゲームでも告白できてよかったと思っている。
だって、告白を受けた彼の顔が無邪気で爽やかなものに変わるのを見て私は確信した。
————この人になら、何をされてもいい。私はこの人のことが大好きだ。
この時から私の青春の華が開花した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。