第53話:王都への帰還~膝の上って最高だ~
- 翌朝 -
頭に心地いい刺激が走り、幸せな朝がやってきた。
目を開けると、約束通りリーンベルさんがナデナデしてくれている。
なんて最高な朝なんだろうか。
………寝よう。
「こらこらっ、また寝ようとしちゃダメでしょ? 寝かしつけに来たわけじゃないんだぞー」
寝かしつけサービスもあったんですか?
僕はまだ子供ですから、1人で寝るのって早いと思うんです。
今度、添い寝をしてもらってもいいですか。
「リーンベルさんはいつも早起きですよね。昔からなんですか?」
「私も色々あって、10歳からお仕事してるからね。得意ってわけじゃないけど、起きないと仕事ができずに生活ができなかったから」
家があるのに、10歳から仕事をしている。
でも家族は姉妹2人だけ。
気軽に踏み込んでいい話じゃなさそうだ、やめておこう。
あっ、ちょ、ちょっと待って!
そこはナデナデポイント!
「今日はなかなか見つからなかったけど、ここにポイントがあるねー。早く起きないと、も~っとナデナデしちゃうぞー」
ナデナデされたい!
で、でもそこは、が、我慢できない!
あっ、ちょ、本当にダメ!
どういうシステムなの!
この世界のナデナデシステムを教えて!
「起きます起きます! だ、だから、それ以上はぁーーー!」
「それ以上はなんなのかなー? よーしよーし、ナデナデされて嬉しいねー」
「ら、らめぇーーーーーー!」
「ふぅ。これ以上はスズに怒られそうだからね。朝ごはんの準備をするから、早く起きるんだよ?」
はぁはぁ。新境地にたどり着きそうだった。
いったい僕の体に何が起こっているというんだ。
もう1回頭を撫でてほしい。
リーンベルさんにナデナデポイントを攻められたい。
恐ろしいほどの快感だよ。
朝からナデナデポイントを発掘された僕は、大興奮で朝食作りに励んでいく。
ビクッ
どうやら今朝のナデナデ攻めで、リーンベルさんの視線に敏感な体になったらしい。
目が合ったわけじゃないのに、視線を感じるだけでビクッと体が反応してしまう。
リーンベルさんのせいで、お婿さんにいけない体になったのかもしれない。
ビクッ
せ、責任取ってもらうんだからね。
スズに責任取ってもらう形でも構わないけど。
そんな変態エネルギーを料理に向けて解き放っていく。
自分でも恐ろしいほど高速に手が動くんだ。
タマゴサンドをいつもの6倍以上の速さで作り上げてしまった。
ビクッ
あっ、そんなにこっち見ないで。
体がまだ覚えてるんですよ。
タマゴサンドを食べながら、ビクビクする僕をおかずにするのはやめて……。
食事が終わると、リーンベル姉妹と一緒にギルドへ向かう。
今朝はギルマスに呼ばれていたから。
地下の会議室へ向かうと、
当然のようにシロップさんに呼ばれるので、僕は膝の上に座らせてもらう。
「今回の王女事件の内通者がわかった。公爵家のマリリーズ=オーリクが犯人だ。
そして、この世にもういない。捕まえようとした時、自ら命を絶ってしまった。他に手掛かりもなかったため、振り出しに戻った状態だ」
「身内はどうだったんですか?」
「洗脳されていてな、まともな情報は出てこないそうだ。そこでフィオナ王女は帰還することになった。長いこと地下生活で悪かったな」
「いえ、親睦会が楽しくて城に帰りたくありませんでした。非常に残念です、公務は全てフリージアで行いたいほどに」
フィオナさんは本当に残念そうな元気のない声だった。
料理をする量は減るけど、清楚なフィオナさんがいなくなるのは寂しい。
話し上手で聞き上手だから、一緒にいてくれると楽しいんだ。
おっぱいが大きい、清楚、おしとやか、可愛い。
最高の要素がいっぱいだ。
ぶっちゃけ、好き。
「それで急なんだが、
国王はノーサンキューだ、会いたくない。
権力とか礼儀とかは、日本の社会を思い出すから嫌なんだ。
上司の顔色を伺いながら話すような貴族社会に、足を踏み込みたくはない。
……でも、スズが料理効果について協力を求めた方がいいって言ってたよね。
ちょうど恩を売った形になってるし。
うーん、会いに行った方がいいか。
「子供なので、礼儀作法はわかりません。その辺り大目に見てもらえるような形でお願いします」
「細かいことを気にする父ではありません、ご安心ください。それに、父も堅苦しいのは苦手ですから」
礼儀がいらないなら一安心だ。
不敬罪って怖いんだよね。
だって、子供って理由で許してもらえないから。
僕の言い逃れ魔法「子供」を封印しないでほしいんだ。
「俺達も護衛に参加しよう」
僕の料理が食べられるか食べられないかで判断した気がする。
「では、準備が出来次第向かってくれ。念のため、騎士の5人はダミーとしてすでに王都へ向かっている。本当の王女を時間差でお前達が護衛する手筈になっている」
念のため、オーガに襲撃された時のことを考えておこう。
旅先で寝込むわけにはいかないから。
ニンジンとクッキーだけ用意したら、何とかなると思うけど。
あと、もう1つ心配事がある。
むしろ、こっちの方が心配だよ。
僕はリーンベルさんに近付き、小声で話しかける。
「王都に行くと長期間離れてしまいます。僕がいなくても、ごはんは大丈夫ですか?」
「うぅ。気にしてたんだから言わないでよ。我慢するから、できるだけ早く戻ってきて。その代わり、戻ってきた時は少し大目に見てください」
今朝とは立場が逆転している。
この人は食べ物に弱すぎだろう。
胃袋をつかみたい僕としては嬉しいけど。
でも期間が開いてしまったら、恐ろしい爆食が始まりそうで怖い。
次に帰ってくるときは、オーガ戦の悪夢を思いださせないでくださいね。
フラグじゃないですよ。
絶対に回収しないでください。
そうだ、こっちからもお願いをしておこう。
「わかりました。その代わり戻ってきたら、また頭ナデナデしてくださいね」
「……別にいいけど、君はいつからそんな甘えん坊になったの?」
「気が付けば大食いだったリーンベルさんが言わないでくださいよ」
胃袋をつかまれているリーンベルさん。
ナデナデで心をつかまれている僕。
長期間別れるのに、お互いに何を求めているんだろうか。
馬車の準備もできていたので、僕達はすぐに王都へ向かうことになった。
今回は護衛依頼なので、ショコラと
といっても、僕に護衛はできないけどね。
アイテムボックスに荷物を詰め込んで、食事の準備をするだけの付き人さ。
王都までは1週間もかかるから、それなりに活躍ができるだろう。
真の付き人パワーを見せてあげるよ。
寝起きのコーヒー牛乳で、野外なのに極上の朝を提供しちゃうからね。
馬車の中へフィオナさんが入ろうとすると、後ろを振り返り、左手を僕に差し出してきた。
「1人では退屈です。タツヤさんも一緒に乗りませんか?」
前から思ってたんだけど、僕の運は唐突に働くタイプだと思うんだ。
急に『おっ、忘れてたわ、すまんな』という感じで、最高の効果を発揮してくれる。
特に馬車の運は最高で、前回の馬車ではシロップさんのご奉仕があったばかり。
それなのに、今度は王女様のフィオナさんと車内で2人きりという、最高のシチュエーションを作り出してくれた。
一応護衛メンバーに入っているから、周りの人に確認をする。
カイルさんは言う、「いいんじゃないか?」
スズは言う、「タツヤは体力がない、乗るべき」
シロップさんは言う、「乗った方が楽だよ~」
リリアさんは言う、「……構わない」
ザックさんはうなずく。
王女様が差し出してくれた手を断っちゃいけないよね。
それに、馬車の中の安全を守る必要がある。
その役目は醤油戦士が承ろう。
ニヤニヤしそうな顔を必死で我慢して、フィオナさんの手を取り、馬車の中へ入っていく。
- 護衛任務開始 -
護衛任務開始から、たったの3分。
早くも事件が起こった。
向かい合って座っていたフィオナさんが、僕の隣にやって来たんだ。
嬉しそうにニコニコして、僕の両脇に手を突っ込んでくる。
混乱しつつも、僕は成されるままに受け入れていく。
だって、可愛いフィオナさんになら、どこを触られても嬉しいから。
その綺麗な両手で、全身を撫でまわされたいという欲望が止まらないよ。
すると、フィオナさんは「ふー」と息を吐いた後、「よいしょ」と言って僕を持ち上げ、膝の上に乗せてくれた。
恐ろしいほど『運』のパワーが発揮されてしまっている。
きっと『今まで忘れてたから、ちょっとサービスしてやるよ』って感じなんだろう。
おかげさまで、再び馬車でご奉仕イベントが発生したよ。
馬車っていう狭い空間が、人を大胆にさせているのかもしれない。
不意に攻めてきたフィオナさんの膝に快感を感じていると、横から顔をひょこっと出して、僕の顔を覗き込んできた。
「実はシロップがやっているのを見て、羨ましいと思っていました」
なんなの、この王女様は。
犯罪級に可愛いじゃないですか。
至近距離で顔を見るとドキドキしちゃいますよ。
もう早くも心臓はマシンガンになりましたけどね。
そんな気持ちを持っていたなら、もっと早く言ってほしかったです。
いつでも好きにしてください。
僕もこの国の民なんですから、王女様の所有物みたいなものです。
朝から晩まで弄んでください。
野外プレイだって受け入れますよ。
そんなことを思っていても、フィオナさんは王女様。
シロップさんのような冒険者じゃないから、力も体力も少ないだろう。
僕の欲望にフィオナさんを付き合わせるのはマズい。
ずっと膝の上に座り続けることは難しいはず。
だから、激しめの短期決戦で弄んでください。
「重くないですか? 重かったらいつでもおろしてくださいね」
「私の膝の上は……嫌、でしょうか?」
「とても良いです。最高です。ずっと座らせてください」
はぁ~、子供って最高だな。
32歳のオッサンが言ってると思ったら、ただのクソ野郎だよね。
でも、今の僕は子供だ。
欲望丸出しでも可愛いって思われてしまう不思議な年ごろ。
あぁ~、王女様のおっぱいを背中で感じても、罪にならないって素晴らしい。
フィオナさんは僕を深い位置まで座らせてくれて、ギュッと抱きしめてくれる。
それだけじゃない、僕の耳元で優しく話しかけてくれるんだ。
女性が耳元で話しかけてくるのはズルい。
意識が持ってかれそうなほど癒される。
もちろん、ギュッとされているからフィオナさんにマシンガンがバレてしまう。
それについては仕方がない。
恥ずかしいけど、これを止めることはできないんだ。
「ドキドキしていますか?」
いつまでも終わらない心拍マシンガンについて聞いてきた。
密着しているため、伝わらない方がおかしいだろう。
それなのに、あえて聞いてしまうフィオナさん。
もしかして、優しい言葉責めをしてくれるタイプですか?
めっちゃ好きですよ。
「僕も男ですからね」
「ふふふ、可愛いですね。途中で倒れてはいけませんよ」
それは、徐々にご奉仕レベルが上がるという意味ですか?
耳を噛めそうな距離で言わないでくださいよ。
噛んでもいいですけど。
「これくらいなら大丈夫ですよ。ギリギリ」
「では、王都までずっとお付き合いくださいね」
フィオナさんって……最高だな。
リーンベルさんのお姉ちゃんポジションを、フィオナさんが奪いに来ているんだ。
しかも、それがまた悪くない。むしろ好き。
フィオナさんと話していると、心が落ち着くようになってきたよ。
心臓は激しい運動を続けているけどね。
僕を膝に乗せたまま、フィオナさんはいつまでも耳元で話し続けてくれた。
本当に1人じゃ退屈って思いもあったんだろう。
話が途切れることはなく、素敵な護衛依頼は順調に進み続けていった。
- 1週間後 -
護衛したのかされたのかわからない、王女様の護衛依頼が終わった。
王都に着いたのはお昼過ぎだったけど、お昼ごはんを後回しにして城へ向かっていく。
やっぱり王族への礼儀が気になったので、フィオナさんにもう1度お願いをしておいた。
優しいお姉ちゃんのフィオナさんは、「大丈夫です、何かあってもお助けしますから」と言ってくれた。
僕は優しいお姉ちゃんに甘えながら生きていくことにするよ。
だって、子供だからね。
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