第20話:初めてのCランク依頼1
マールさんとヒソヒソ話している間に、スズが依頼を選んでくれている。
前もリーンベルさんにお任せだったからね。
パーティになった今はスズにお任せだよ。
しばらく経つと、スズが依頼書を持ってきてくれた。
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〇 Cランクモンスター、シルバーウルフ3体討伐
1週間前から明け方にやって来て、畑を荒らしている。
人が襲われ被害が出ているので、早めに対処してほしい。
シルバーウルフは単体でもCランクモンスターになる。
※パーティ推奨
――――――――
ここから半日ほど歩いたところにある、『エンレイ村』の討伐依頼だ。
Bランク冒険者のスズがCランク依頼を持ってきたのは、僕に気を使ってくれたのかな。
リーンベルさんの元へ向かい、スズと一緒に受付処理をしてもらう。
僕とスズのパーティ『ショコラ』の初依頼だ。
「スズがいるから問題ないけど、くれぐれも無理しないようにね」
「大丈夫ですよ。ウルフ系は得意ですから」
ウルフには腐った卵最強説があるからね。
「「あのステータスなのに?」」
2人でぼやかなくてもいいじゃないですか。
低すぎてネタにするしかない的な雰囲気はやめてください。
依頼受付を終えたら、宿へ戻って依頼で離れることを伝える。
宿の夫婦はすごく心配してくれたよ。
クッキーが逃げると思ったんだろうね。
だって「クッキーを少し置いてってくれ」って頼まれたから。断ったけど。
エンレイ村には『行きは馬車、帰りは徒歩』の予定だ。
田舎の村へ向かう馬車は少ないため、1週間に1回しか出ていない。
偶然にも今日、馬車が出発する日だったから、急いでスズと飛び乗ったよ。
- そのまま馬車で揺られること、約半日 -
途中で馬を休ませるために、何回か休憩を挟んで進んでいった。
何も問題のない順調な旅で、ギリギリ明るいうちにエンレイ村へ辿り着いた。
スズは村に着くと、迷わず村長さんの元を訪ねる。
出てきた村長さんにギルドカードを見せながら、
「Bランク冒険者、火猫のスズです。依頼を受けてきました」
と、Bランク冒険者であることを伝えた。
Cランク依頼でこんな子供が来たら、正直ガッカリするだろう。
僕とスズは互いに身長が低く、見た目は二人とも子供。
それなのに、村長は「あの火猫様が!」と歓喜をしていた。
それを聞いた村人も「あれが噂の火猫様か!」「火猫様だって?」「猫神様か!」と、次々に集まり始める。
『火猫のスズ』のネームバリューが半端ない。
僕の付き人感も半端ない。
村長とスズは固い握手をして、村長宅で依頼の話をする。
僕に握手がなかったけど気にしない。
付き人だと思われてるだろうからね。
あながち間違ってもないし。
シルバーウルフの目撃者と村長から現状と被害について話を聞く。
「約1週間前から突如シルバーウルフが現れて、毎日のように畑を荒らしております。そればかりか家まで襲ってくるようになりまして……」
村長と目撃者たちの話が長かったので、まとめようと思う。
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・毎朝シルバーウルフ3体が北側、もしくは東側からやってくる
・村の4割の畑が壊滅状態
・貯蓄していた食糧庫が襲われ始めている
・人的被害も出ている
・シルバーウルフが怖くて身動きが取れず、狩りに行けない
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村に着いてから1時間ほど話が続いた。
辺りはすでに真っ暗。
この世界は娯楽が少ないため、夜に活動するのは酒飲みぐらいだ。
でもシルバーウルフの被害が大きい状態で、酒を飲もうとする人はいない。
家に灯りが付いていても、かなり静かな夜だった。
依頼の話が終わって解散かと思ったら、スズが耳打ちをしてきた。
「肉、20キロ出して」
スズの言う通り、僕は目の前に20キロのオーク肉を取り出す。
ドンッと肉の塊がいきなり現れたため、村人たちは驚く。
「話を聞いて疲れた。代わりに料理してほしい。余った肉はあげる」
狩りにいけない村人のために肉をわけてあげたいんだろう。
やっぱりスズさんはイケメンだな。
「こ、こんなにですか!? ありがたい申し出ですが、いただくことはできません。料理はお作りいたしますから、残りはお返しいたします」
「持ってても腐る、処分するしかない。有効活用するべき」
アイテムボックスに入れてあるから、腐らないけどね。
僕は空気を読める男だから口に出さないけど。
苦しんでいる村人に食べてもらいたいんだろう。
村長は涙を流しながら、オーク肉を受け取ってくれた。
僕が思っているより被害が大きいのかもしれない。
あまりにもスズがイケメン過ぎるから、僕の存在がますます付き人になってしまった。
誰も僕を見ちゃいない、ちょっと悔しい。
ここはスズの存在に負けてはいけない気がする。
対抗心が芽生えた僕は、【調味料作成】で唐突に塩を作り出す。
いきなり現れた岩塩の塊に、村人と村長は驚いている。
「この前3トン見つけて腐りそうだから」
よくわからない嘘をついてしまった。
だが仕方ない、対抗したいんだ。
「はぁ~~~!! ありがとうございます!」
ようやく村人が僕のことを認知してくれたようだ。
スズみたいに崇められたよ、やったね。
きっとスズのポイントも上がったと思うんだ。いい付き人でしょ?
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