第11話:クッキー様って何?
リーンベルさんにクッキーを渡そうと思うだけで緊張してしまう。
渡すのはリーンベルさんだけど、ギルド職員のみんなで食べてもらおうと思う。
昨日は仕事中のリーンベルさんに長時間付き合ってもらったんだもん。
リーンベルさんがする仕事を、誰かがフォローしてくれてたはずだから。
お昼時で忙しくない時間だったとはいえ、ギルドに迷惑をかけてしまったお詫びだね。
ギルドに入ると、マールさんとリーンベルさんが受付カウンターにいた。
マールさんは冒険者の受付をしていたので、ちょうど手が空いているリーンベルさんに声をかける。
「リーンベルさん、こんにちは」
「こんにちは。もう大丈夫?」
「はい、おかげさまで。昨日は本当にありがとうございました」
「どういたしまして。あまり無理しないで遠慮なく相談してね。一緒に悩むくらいはできるから」
やっぱり天使だな、リーンベルさんって。
ずっとこの人についていきたいと思う。
「昨日の素材は売却で大丈夫?」
「はい、お願いします」
リーンベルさんが手続きをしてくれて、ジャラジャラといっぱい入っている袋を渡してくれた。
「オーク1頭から約30kgの食用のお肉が取れるの。ちょうど値段も高くなってたから、金貨30枚になったよ」
「そんなにですか?」
「うん。一応言っておくけど、オークはDランクモンスターだからね」
「わかってます、今回は嫌な思いしたのでお咎めはナシの方向で……」
「一応言っておくの、一応ね。君は何かしら無茶をする話題が多いから」
昨日だけで金貨30枚(30万円)ゲットしたと考えると、一気に金持ちになった気分だ。
いきなり30万も手に入ると勝手に頬が緩んでしまう。ぐへへ。
って、ギルドにウハウハしに来たわけじゃないんだ。
「その~、いつも色々良くしていただいてますし、昨日は本当にお世話になりましたので……お礼を、と思いまして」
恥ずかしくて顔もまともに見れないのは情けないと思いながら、クッキーを100個入れた箱を差し出した。
「さっきクッキーを作ったので、良ければギルドの皆さんで食べてください」
「……つ、作った? えーーーーー!?」
まさかリーンベルさんが叫ぶほど驚くとは思わなかった。
逆にこっちが驚いてしまうよ。
隣にいるマールさんも驚いている。
って、ギルド中の視線を浴びてるじゃないですか!
やだ、恥ずかしい。
「シーですよ、シー。叫ばないでください。ちゃんと食べれますし、おいしいと思うので食べてください」
「あ、はい。ごめんね。あれ? ク、クッキーって高価なもの、だよね? あれ? クッキー……あれ?」
僕が思っていたよりクッキーは珍しいものだったみたいで、箱の中身を見てパニックになっているようだ。
箱を開けたり閉めたりを繰り返して「え? え?」と、何度も確認して驚いている。
何回開けてもクッキーしか入ってないんだけどね。
「えっと、しっかりしてくださいね? いっぱい作ってまだ残っていますから、足らなければ教えてください」
「あ、うん。いやいや、そんな気軽なものじゃないでしょ。こんなにいっぱい入ってるんだよ。それになんで作れるの? さっきから甘くて良い匂いがするとは思ってたけど」
「作り方と材料は秘密なので言えませんが、作ろうと思えばすぐ作れます。 それより……ちゃんと食べてくださいね。リーンベルさんが喜んでくれなきゃ意味がないですから。じゃ、じゃあまた明日来ます」
オークのお金をアイテムボックスに入れて、逃げるようにギルドを後にした。
恥ずかしい! 恥ずかしすぎるよ!
女の子にプレゼントするってこんなに恥ずかしいことなのか。
でも、なんとか目的は達成することができてよかった。
初めてのプレゼント渡しでまだちょっとドキドキしてるけど。
世の中の男はどうやってプレゼントを渡してるんだろうか。
もっと余裕を持って渡せていたら、一緒にお茶とかできたのかなー。
……仕事中だから無理か。
- 翌朝 -
リーンベルさんが喜んでくれたか気になって、あまり眠ることができなかった。
朝日が昇ってきたし、このまま起きることにしよう。
僕は早起きが苦手だけど、異世界に来てから毎日早起きをしている。
朝早くギルドへ行くと、リーンベルさんやマールさんと話せる時間があるんだ。
冒険者の中では、毎日1番早くギルドへ行っているよ。
ちなみにリーンベルさんとマールさんは朝早くからいるけど、アカネさんは少し遅めに来るから運が良くないと話せる時間がない。
今日も朝早くからギルドへ行って、冒険者の中で1番乗りをする。
おっ、ラッキーな日だ、今日はアカネさんもいる。
相変わらずボタンを弾き飛ばしそうな素晴らしいおっぱいだ。
早速カウンターへ向かって、美人受付嬢たちを独り占めにしよう!
「おはよう。クッキーすごいおいしかったよー」
朝から満面の笑みで天使スマイルを放つリーンベルさん。
グッ、今日も1段と可愛いですね。
爽やかな朝にピッタリですよ。
「おはようございます。喜んでいただけたのなら嬉しいです」
横にいたマールさんが「ボクは初めて幸せを知ったよ」と大袈裟に言い、
アカネさんが「おいしかったから、お礼を言いに早起きしてきたのよ」と言ってくれた。
3人の美人受付嬢たちに褒められるなんて嬉しい限りだ。
もっと……もっと褒められたい!
お礼は体で払ってくれてm(自重
そこに依頼カウンターの人までお礼を言いに来てくれた。
「この子が作ってくれたクッキー様なの?」
「今までで1番おいしかったよ、クッキー様」
「クッキー様みたいな弟が欲しい」
「さすがクッキー様」
クッキー様って何? と思いながらもチヤホヤされて嬉しく思ってしまう。
依頼カウンターのお姉さんも美人ばかりだからね。
でも、頭を撫でてくれるとかハグしてくれてもいいんだよ?
言葉だけじゃ伝わらないことってあるからね、体で伝えてもらいたい。
むしろ僕の体を弄んでほs(自重
唐突に起こったモテ期を楽しんだ僕は、ノリノリで引っ越し依頼を受けることにした。
リーンベルさんが「今日は引越し依頼があるよ」と言ってくれたからね。
狩りした方が儲かるけど。
でも、街の人と交流もしたいから率先して受けるようにしている。
いまだに異世界の知り合いってギルド職員さんぐらいだから。
少しくらい顔見知りが欲しいんだ。
とはいっても、コミュニケーションが苦手な僕は依頼をこなしても仲良くなれない。
アイテムボックスの珍しさに驚かれるぐらいで、話が膨らまないんだ。
すぐ終わっちゃうから評価は高いみたいだよ。
予想通り今日の引っ越し依頼もあっさり終わってしまった。
まだ時間も早いし、ゴブリンでも倒そうかな。
クッキーを食べながら、いつも通り西門から外に向かった。
毎日西門から独りで出ていくのは寂しい。
でも、クッキーがあれば口は寂しくない。
この考えがすでに寂しいけどね。
30分ほど歩くと、ゴブリンではなくウルフが出てきてしまった。
君を倒しすぎたらリーンベルさんに怒られるから控えてもらいたいよ。
迷わず腐った卵を取り出し、ウルフの近くに投げつける。
ポイッ ベチャ フゴッッッッッ!
あれ? 直接鼻に当たってないのにフゴッたぞ?
……フゴるって新しい日本語ができてしまったね。
それにしても、今日の腐った卵は1段と臭いなー。
臭すぎて1発でフゴッたんだろう。
環境破壊にならないか心配だよ。
スキルレベル上がって臭くなったのかもしれないから、ステータスを確認しようかな。
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名前:タツヤ
年齢:10歳
性別:男性
種族:ハイエルフ
状態:MP回復速度上昇(1時間)
Lv:1 (MAX)
HP:100/100
MP:0/0
物理攻撃力:100
魔法攻撃力:200(+100 1時間)
腕力:50
体力:50
知力:180 (+90 1時間)
精神:320000
敏捷:70
運:100(MAX)
【スキル】
アイテムボックス、異世界言語
【ユニークスキル】
調味料作成:Lv.4 1up new!
(料理調味料:Lv.4 1up new!・お菓子調味料:Lv.4 1up new!)
【称号】
悲しみの魔法使い、初心な心、パティシエ new!
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【調味料作成:Lv.4 】
思い描くように料理調味料お菓子調味料を作成することができる。
生成した調味料で料理を作ると、素材の味を引き出し、あらゆる効果を産み出す。
【料理調味料:Lv.4 】
・醤油 ・ソース
・香辛料 ・卵
・塩 ・味噌
・昆布出汁 ・鰹出汁
【お菓子調味料:Lv.4 】
・砂糖
・チョコレート
・牛乳
・生クリーム
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【パティシエ】
・誰もがおいしいと思うほどのお菓子作りをしたものに与えられる称号。
お菓子作りの効率が良くなり、失敗しにくくなる。
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お?! なんか1時間だけステータスが向上しているぞ?
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