第25話 検査結果出るまでの注意事項、夫は右から左へ聞き流す

 上司に顛末を報告した後、夫に告げた。


「結果が出るまで、トイレやスイッチはアルコール消毒しておく必要があるからアルコールティッシュをあちこちに置いておく」


「わかった」


「便座はトイレクイックルで拭く。界面活性剤だから不活化するから、拭くくらいは私ができる。お風呂は私が最後になるから」


「はいはい」


「あと、常々言っていたが、万一の時は寝床を別にする必要があるからあなたの部屋(魔窟という名前の物置)を片付けてなんとかしなさい」


「へーい」


 絶対に片付けないな、こりゃ。事実婚状態から数年経つが片付けしているのは二桁行ったか行かないかくらい。きっと謎の虫とか新生物や邪神が現れても驚かないくらい魔窟だ。自宅待機だから時間あるのにまたYouTube観てるし。


「食事も適当にして。私は食欲がないから買い置きのスポドリとスープ、スムージーで充分だから作らなくていいよ」


 万年病弱の私(のちに何割かはアレルギーによるものと判明)は常時こういう「病気の時の簡単食料」を常備していた。まあ、濃厚接触者疑いの夫に買いに行かせるわけにはいかないし、実際に必要な時はネットスーパーの置き配が現実的だろう。


 三日後の土曜、病院から連絡がきた。

 陰性であるが、症状が出た日から十四日間は自宅待機してほしいとのこと。

 あれこれ換算すると翌週の火曜日までだ。


 夫に報告したところ、ある意味予想通りの答えが返ってきた。


「だから言ったろう、遠距離通勤と早番による疲れによるものだって」


 カチンときた私は反論した。


「そこは『良かったね』じゃないのか」


「俺まで巻き添えでその日まで自宅待機なんだよ。それに誕生日プレゼントにエアウィーヴ買ってあげようとしたら自分で買ってしまうし」


 普段から「仕事だりぃ」という割にはいざ休めるとなると不機嫌になるものなのか。


「プレゼントぉ? 今まで私が欲しいと言ってまともに買ってくれたことないから自分で買ったまでよ。それならさっさと結婚指輪買ってよ。金属アレルギーならチタン製があると何度も言ってるでしょうが」


「結婚指輪する意味わからんと言ってるだろ」


「お主が意味わからなくていいんんだよ、とにかく買えや。していないせい&マスクで年齢不詳のせいで、要らんセクハラやら秋波が来るんだからわかれや」


 最後の方はエセ関西弁による喧嘩に発展したので割愛。ちなみにチタン指輪が買えないというほど貧乏ではない。


 残り四日間、寝てていい大義名分ができたので私はぷいぷり怒りながらも布団に戻ったのであった。

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