第24話 PCR検査は痛かった

 すったもんだの末、車にて検査機関の病院へ。

 降りずに車中で待ってくださいとの指示に従い、大人しく待つ。

 飛沫を飛ばさないように車内でLINE会話となる。


『ただの疲れでしょ』


『そうとは思うけど、通知が来てたし、一週間前からダルいし、七度二分と微妙だから保健所も検査機関を紹介したのでしょ』


『本当に大袈裟なんだよ』


 外を見ると同じような車がチラホラあって、看護師さんが奔走していた。そして防護服を着た看護師さんがやってきた。


「すみません、保険証をお願いします」


「はい、これを……」


「あ、このビニール袋へ入れてください」


(そっか、保険証もプラスチック製だからウイルス付着の危険性があるためか)


「もうしばらくお待ちください」


 そう言うと、小走りで院内へ戻っていった。九月は第二波も収まり、患者数が少なかった時期である。そんな時期でも医療従事者は大変そうだ。


 かといって、Cocoa通知を伏せていたら万一陽性だったら、自分がばら撒くことになる「腸チフスのメアリー」にはなりたくない。


 余談だが、緊急事態宣言前にGWに義父母と旅行の話があったが反対したのは私一人だけであった。

 ちなみに義父母はいい人なので旅行そのものは反対ではない。しかし、ウイルスが蔓延している状況でも旅行を計画するのはまずい。自分が不顕在感染者でばら撒くことになりかねないと言っても夫は納得しなかった。


 私は「腸チフスのメアリー」で検索しなさいと指示して読ませたが「俺、料理人じゃねーし」と一ミリどころか一ミクロンも理解しなかった。

 ……国語苦手だったというし、文脈を理解しないのはやはりASD疑いだよな。結局、宣言で渋々と諦めたのであった。


 しばらくして、キットを持った先程の看護師がきた。今は唾液でわかるそうだが、この時は綿棒を鼻の奥に突っ込んでグリグリするアレである。


(うぎゃぁぁぁぁああああ、痛い痛い! 確かに人によってはくしゃみ出て医者も感染の恐れあるから防護服なんだ)


 叫ぶと飛沫が飛ぶので、くしゃみ含めて堪えた自分を褒めたい。


 結果は三日後になるというが、その日は土曜日で保健所は休みである。陰性の時のみ病院から連絡が来るとのことであった。また、料金も先に一万円を預け、預かり証を貰い、後日精算するとのことであった。

 車を返してふてくされている夫を後目に上司に顛末を説明し、土曜日に緊急連絡先へ電話するということを話して私は再び横になった。

 たったこれだけでも疲れるのだから、もしかして? しかし、当時の基準であった七度五分に満たない。平熱は低いと五度台もあるよな、とぐるぐる考えていたら眠っていた。

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