第38話 クリニックへ相談するが空振りとなる

 先の話でも触れたが、私はADHDなので治療薬のストラテラを処方してもらう為にメンタルクリニックへ通っている。

 あと、抗うつ剤と眠剤も少々。理由はストラテラの副作用で動悸がすることと、勤務形態はホワイトなのになぜか現職の人が亡くなりやすいヘビィな職場によるストレスだ。しかし、人に話すと「いや、結構ブラックじゃない?」と言われる。

 実家の家族には「七時までなんて残業じゃない」「うちの会社だって変なの来るぞ」「これだから公務員はぬるくてずるい」と言われてきたからブラックじゃないと思ってたのだが。


 話を戻すとある時、カクヨムであるユーザー(現在は退会済)とトラブルになり、その二日後にオフ会に出た服装、店で座っていた位置を具体的に某掲示板に書かれ、「〇〇は許しても俺は許さない、震えて眠れ」と脅迫めいたことをされ(警察には届出済)、その一週間後に上司が昼に職場で倒れて救急搬送されるも、そのまま亡くなると言う出来事が起きた。

 さすがに短期間にこれだけのことが起きてしまってはメンタルがもたない。そういう理由で抗うつ薬も処方して貰っている。


 そのクリニックにて、夫の事を相談してみた。就任式のあとだから一月下旬くらいだと思う。ちなみに相変わらず夫はノーマスク。


 私は近況を聞いてきた主治医に切り出した。


「夫が陰謀論にハマってしまったようです。バイデン氏が大統領になるために中国が手助けした、トランプ氏は嵌められたと真面目に主張してます」


「あと、アビガンは治療薬であるが、論文を取り下げて世界中を油断させて、中国が大量生産して世界中に高く売りつけるタイミングを図っていると、医療関係者ならおわかりでしょうが、荒唐無稽なことも言っています」


 今書いてもアホみたいだが、夫は大真面目にまだ上記のことを主張していた。


 医者はサラッと言った。


「ああ、あれね。本当にあるよ」


 ブルータス、お前もかぁ! と思ったが違った。


「Qアノンと呼ばれる存在がトランプ氏を勝たせようとネット書き込みしてバイデンへの妨害工作したけど、結局トランプは敗れたでしょ。そんなもんよ」


 あ、そういう意味か。Qアノンも陰謀論に出てくる組織だもんな。


「それにご主人のはちゃんと定義あるよ」


 え? 病名あるの?


「『感応性精神病』と言って、ある情報に触れているうちにだんだんその考えに染まってしまうことを指す。ただ、いくら言っても今のアメリカみたく分断が進むだけだから言っても無駄だよ」


 夫、『感応性精神病』疑い、しかし対策無し。


 自力で解決法を探るしかないのか……失望感と共にクリニックにていつもの薬を貰うのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る