忘れ木犀

あなたを忘れるための嘘

吐いた口を塞げないな

ごめんねと言えないまま行く

並木道、俯いている


吹く秋風 止むのを待つ

ベンチからは匂いが立つ

また会おうねと言ったあの日から

まだ動けないでいる


あなたが待っているからと言い訳

衝いた口が塞がらないな

ただいまと言うまま俯く

靴を脱ぐ 腕時計を外す


吹く秋風 窓の外で花が揺れた 匂いが消ゆ

また明日と言った並木道から

まだ動けない僕だ


色無き風に煽られた僕は

詩の一 ページを何処かに忘れてしまって


心に溜まった思い出の水を零してしまわぬように

細いペンの先から溢れてしまわぬように

空に向けて詩を書くよ

透明なインクで 名も無い詩を


吹くな秋風 僕はあなたを探しているんだ

匂いよ立て まだ残っているか、金木犀の匂い

また会える日まで 

また会えるように僕は歩く

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