第7話「イェーガー試験とエロコスチューム」
第555番太陽系。
その中にある、惑星オラクル系所属コロニー郡。
第55番太陽系にて、最初にテラフォーミングされたその星には、この星系を管理する銀河連邦の支部が置かれていた。
同時にそこには、今現在この星系を守る為にはなくてはならない職業。
その、管理と仕事の提供を行う為の組織があった。
名を「イェーガー」。
旧文明のある国における「狩人」を意味する名前がつけられたこの職業は、MMM等の機動兵器を持った、傭兵とバウンティーハンターを混ぜ合わせたような物である。
犯罪者や宇宙海賊の検挙、危険な原生生物の駆除。
依頼者の護衛から、運び屋のような仕事。
………まあ、結論から言うと何でも屋である。
それも、銀河連邦の国営の。
この第555番太陽系は未だ開拓の最中であり、連邦軍の力もそこまで強くなく、更には軍隊を動かすにも面倒な手続きを踏まなければならない。
だから銀河連邦は、今はこのイェーガー達に頼らなくてはならないというのが現状だ。
まあ一般の市民からすれば、
イェーガー関係で仕事が供給される事や、イェーガーで一発当てて人生を逆転させるチャンスがある事を考えれば、それで失われる命の事を考えてもむしろ感謝すべき状況でもあるが。
それは、貴明にとっても変わらない。
………………
オラクル系コロニーの一つ。
イェーガーの管理や仕事の提供等を行う組織、通称「ギルド」の本部があるコロニー「ゴールドラッシュ」。
一攫千金を狙うイェーガー達が集まる場所には、ピッタリの名前であるそのコロニー。
その、一角にある荒野。
一見するとただの荒野であるが、その正体はMMMの操縦訓練の為に設けられた模擬戦闘用フィールドだ。
外への流れ弾を防ぐ為に、プラズマ粒子によるバリアーが張られている為、思い切り操縦ができる場所でもある。
たまに、連邦正規軍も演習で使う。
そんな、模擬戦フィールドにて、二体のMMMが対峙していた。
一体は、オッグ。
模擬戦用に調整された機体であり、連邦仕様のライトグレーの塗装が施されている。
軍のイメージの為か、本来
パイロットはおらず、搭載されたAIで戦闘を行う、無人機だ。
そしてもう一体。
それも、連邦仕様のオッグである。
ただ、対峙している方のオッグと違い、操縦者はAIではない。
コックピットには、貴明の姿があった。
『実技試験、開始!』
スピーカーから響いたアナウンスにより、模擬が始まる。
先に動いたのは無人オッグだ。
マシンガンを放ちながら、貴明オッグに向けて突撃してくる。
「ッ!」
対する貴明オッグは、それを手にしたシールドで防御しつつ、回避に専念する。
貴明は待っているのだ。
相手が、弾丸を使い終わる瞬間を。
その為に距離を取りながら………マシンガンでなければ攻撃が届かない射程範囲内を、煽るように飛び回っている。
しかし、相手AIもバカではない。
マシンガンを撃ちつつ、僅かな隙をついて貴明オッグに対して突撃を仕掛けた。
「かかった!」
だがそれも、貴明からすれば想定内。
マシンガンの雨霰をシールドで防ぎ、こちらも突撃する。
何発か被弾したが、問題ではない。
ガシャンッ!!
無人オッグのAIは回避が間に合わず、両方の機体が衝突する。
バランスを崩した無人オッグに対し、貴明オッグがカーボンチョッパーを振り上げる。
ばきゃあっ!!
無人オッグの頭部に叩き込まれる、カーボンチョッパー。
それは、AIの搭載してある頭部を意図も簡単に叩き割り、砕けたバイザーの破片が辺りに散らばった。
無人オッグは、痙攣するように少し震えた後に、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
『試験終了、おめでとう、これで今日から君もイェーガーだ』
アナウンスが響き、戦闘が終了する。
貴明は肩の力を抜き、ふうとため息をついた。
………………
貴明がこの、スペースコロニー・ゴールドラッシュに訪れていた理由。
それは、ここで開催されるイェーガーの認定試験を受ける為だ。
ウィンダムという高性能MMMと、それを操縦するテクニックを持つ貴明にとって、金銭を稼ぐ上で一番手っ取り早い職業はイェーガーだった。
簡単な筆記試験と、MMMの操縦試験をパスすれば、誰でもなれるのだ。
無論収入は安定しないが、連邦の軍人よりは稼げるし、貴明の大嫌いな体育会系的上下関係も無い。
最もその分、自分で色んな事を学んでいく必要があるのだが、そんな事は理解の内だ。
「………んふふっ」
ギルド本部のロビーにて、「Takaaki saitou」と書かれた認証カード………つまる所のイェーガーの免許証を見て、笑みをこぼす貴明。
運良く、この世界の標準語が英語だった事と………おそらく転生者特典として………貴明が英語を読めるようになっていた事から、なんとか不自由はせずに済んだ。
「………それにしても」
貴明が辺りを見回すと、嫌ではないが嫌でも目に入る光景。
主に、辺りを歩く女達の服装。
正直、アングラに爪先を突っ込んでいるというか、あまり綺麗な仕事とは言えないイェーガーではあるが、一応ここは正式な連邦政府の施設である。
だが、ここを歩く、恐らくイェーガーと思われる女達のコスチュームは、過激なモノがほとんどだ。
SF風にアレンジされたビキニアーマーのような物。
ぴっちりと肌に張り付いたセパレートタイプのインナー。
隠す気すらないミニスカートに、モロ出しのTバック。
おまけに、それを着こなす女達の多くが、Gカップ以上の巨乳をぶら下げ、モデルのような凹凸の効いた抜群のスタイルを保っている。
ほぼ露出狂の集会か、承認欲求に溺れたコスプレイヤーのイベントかと言った感じである。
けれども、「平成」においては何ら珍しい光景ではない。
かつては、キャラデザ担当の好みやファンへのサービスとして、こうした過激なコスチュームの女性キャラが作品を彩った。
それは令和においても、その要素は受け継がれて存在している。
が、以前言った通りに女性層や新しい世代からは「意味が感じられない」「作者の自己満」「シンプルにキモい」「オタクの痛々しい妄想」と慈悲もなく処断されている。
加えて、海外からの目線や圧力も考えると、これもまた、やがて時代の波に消えてゆく「平成」なのかも知れない。
しかし、このG.Cはそんな「平成」により形成された世界。
こんな全裸よりも恥ずかしいコスチュームも、この世界においてはよくある普段着として認識されており、女は恥ずかしがらないし、男も下衆な目で見ていない。
「んふふふっ、絶景かな絶景かな………」
ロビーのソファに腰掛け、女達を舐め回すように見つめる、この斉藤貴明を覗いて。
貴明も、そんなコスチュームの美少女キャラで致した事は多く、好みの性癖にも合致する。
いわば、「オカズ」がそそる格好で普通に歩いている状況だ。
それに、彼女達や世間の認識では、その格好は卑猥な物でもなんでもない。
ので、見たとしても怒られないし、相手に見ていると気付かれない限り、いくら見てもいい。
「ふふ、写真録っとこ………」
このように携帯のカメラで写真を取ったとしても、端からは風景を撮っているとしか認識されない。
貴明からすれば、パラダイスのような世界である。
「戻りました、マスター」
「うおっ?!」
そんなスケベオヤジ全開の事をしていると、突然背後から飛んでくるパフィの声。
イェーガー活動に使う戦力、すなわちウィンダムの事をギルドに報告しに行っていたのだが、それが終わったようだ。
「は、早かった、ね?」
先程のスケベオヤジしぐさがバレないように、貴明は平然を装い、携帯をポケットに仕舞う。
パフィは相変わらずニコニコしている。
貴明は、バレてませんようにと願っていた。
「早速ですがマスター、お仕事の依頼です」
「お仕事?」
「はい、こちらの方から」
そう言ったパフィの背後から、一人の人物が現れた。
それは………。
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