イェーガー家業編

第6話「G.Cでの貴明の日常」

G.C750年。


その、幾度となく繰り返された戦乱の時代の後の、平和な時代。

始祖の惑星「地球」を本部に置く「銀河連邦政府」の統治の元に、表面上は平和を保っている時代。


そんな時代の、宇宙の片隅。

未だ開拓の最中にあるという、第555番太陽系にて………。





………………






………貴明が異世界転生を果たし、この世界に生を受けてから、早くも一月の時間が流れた。


あの時無力化した宇宙海賊達だが、どうやら、この基地跡………「グレイブヤード」と呼ばれていたらしい………への盗掘行為以前にも、各地で海賊行為を繰り返し、指名手配されていたらしい。


連邦政府に突き出してきた際に出された賞金により、この何もない宇宙遺跡で一月暮らせる程の備蓄を得る事が出来た。



『大分操縦が上手くなりましたね、マスター』

「そう?ありがと」



その一月の間何をしていたかと言うと、見ての通り、ウィンダムの操縦訓練だ。


この世界においては、MMMは圧倒的な戦力になる。

加えて、ウィンダムはMMMの中でも高性能機の部類に入る一機だ。

使いこなせるようになって、損はない。



一月の操縦訓練の甲斐もあり、貴明の操縦テクニックは格段に上がった。


訓練用にペイント弾を搭載して放流した、予備の移動砲台を前に、転生初日が嘘のような立ち回りを演じるウィンダム。


迫るペイント弾を全て回避し、ビームショットを移動砲台向けて放つ。

バシュッ!と、放たれたプラズマ粒子の弾丸は、移動砲台を正確に貫き、爆散させる。


勿論、この時パフィの操縦サポートは受けていない。

それなのに、一月前のオッグ戦の際と同じ距離の射撃を、たった一人でやってのけた。



『ハイスコア更新!流石ですマスター!』

「そういうの、よくないよパフィ、戦場はゲームじゃない」



通信の向こうで喜ぶパフィを、貴明はそう言って諌める。

貴明は知っている。

「平成」では、そうやってゲーム感覚で戦争を楽しむ存在は、いくら戦士としての腕がよくとも必ず負ける事を、貴明はテレビ画面の向こうのフィクションで学んだからだ。



『訓練はこの位でいいでしょう』

「だね、じゃあそろそろ帰るよ」



訓練を終えて、ウィンダムはグレイブヤードへと帰還していった。





………………





グレイブヤード。

その正式名称が「人類種最終保存施設・アーク」である事は、起動と同時に施設の全てを把握したパフィと、パフィから聞かされた貴明しか知らない。


かつての宇宙戦争の時代に、あまりにもの戦況の悪化と拡大の結果、人類が絶滅しかけた事があったという。

それを回避する為に作られたのが、この施設。


貴明の身体を形成した生体3Dプリンタや、ウィンダムのような高性能機を防衛戦力につける辺り、

誇張抜きで当時の人々はこれに人類の希望を賭けたのだろう………



………まあ、結果今もこうして絶滅せずに生き残り、表面上の平和の裏であの日のような宇宙海賊までやっているのだから、人類もしぶといものである。



「ふぅ………」

「お帰りなさいませ、マスター♪」



訓練を終えて帰って来た貴明を、パフィが出迎えた。

汗をかく貴明にタオルとスポーツドリンクを渡す様は、前世の貴明が羨望と妬みの目で見ていた、学校のスポーツ部員と女子マネージャーのよう。


あれから、パフィと一月の共同生活を送った為か、貴明は女子相手でもなんとか話せるようになった。

まあ、キョドらなくなっただけで、基本的には変わらないのだが。


メードロイドを名乗るだけはあり、パフィは貴明の身の回りの世話を何でもしてくれた。

グレイブヤードの一部の機能が生きていた事もあるが、炊事洗濯その他諸々で、今のところ貴明が不自由を感じた事はない。



「………ゴクリッ」



そして目に入るのは、そのハイレグのような衣装にくっきりと浮き出た、外見14歳の少女が持つには大きすぎる双球。


物理法則の一切を無視し、元よりそういう形に作られたかのように、ぴっちりと布に覆われた乳房のラインがはっきりと解る。



平成ポイントその8。

乳袋である。


貴明の知る範囲の知識によると、アメコミが発祥とされるそれは、アニメ等のいわゆる巨乳キャラの表現として長きに渡り描かれてきた。


ところが、時間の流れと共に目が肥えたオタクや、一部の高尚気取りから「リアリティが無くて気持ち悪い、下手な絵」「服の構造を理解できてないバカの絵」と、罵声を飛ばされる物になった。


まあ実際には、三次元でも作れない事もない物ではある為、一概にリアルじゃないとは言い切れない。

けれども、乳テントを初めとする新表現の登場や、客層が広がった為に女性や子供も意識しなくてはならない等の事から、数を減らしているのもまた事実。


乳袋。

それもまた、「平成」の一つなのである。



「………どうかしましたか?マスター」

「えっ?い、いや、何も………」



そんな事を考えていると、パフィが怪訝な顔で見つめてきた。

胸を見て考え事をしてきた事がバレると思い、貴明はなんとか誤魔化した。



「あ、じゃあ俺、シャワー浴びてくるねッ………!」

「はい♪では私は夕食の準備に入りますね、マスター♪」



そして逃げるように、貴明はシャワールームへと向かって行った。



「………マスター、また私のおっぱい見てた………♡」



………この時、貴明は気付かなかった。

パフィが、自分の胸を撫でて、意味深な笑みを浮かべていた事に。





………………





おそらく、この施設の人員の為に作られた広大なシャワールームで、貴明は汗を流した。

そしてパフィが作った夕飯を済ませると、施設内にあった宿直室のベッドに転がる。

現在、貴明が自室として使っている部屋だ。


視線の先にある部屋の照明を見つめ、貴明はふと考える。



「………パフィって、おっぱいでかいよなぁ」



訓練の後で昂っているからか、そんな事を考えてしまう。


だが確かに、あの乳袋からも解るように、パフィは巨乳だ。


前世の貴明が二十代の頃に一時期オカズにしていたグラビアアイドルが居たが、見た感じだとあれと同じぐらいだ。

確か、バスト92cmのGカップだったか。


それが、毎日眼前で歩く度にだぷんだぷんと揺れたり、何かしらを持つ度にむにゅんと変形する様を見せられている。

パフィが意図してやっているかは解らなかったが、それは16歳の肉体に戻った貴明からすれば、十分に情欲を煽るもの。



「………抜くか」



そう思い立った貴明は、携帯電話………奇しくも生前使っていた「スマートフォン」に似たタイプの物………を、取り出した。


あの宇宙海賊達を連邦政府に突きだした際に 、この先生きていく為には何かと必要な物だ、と、パフィに契約させられた物だ。


確かに、G.Cが前世のような科学文明の延長線上にある世界であるから、携帯端末の一つや二つは必須のアイテムである。


………けれども、この時の貴明には別の側面の使い道があった。


携帯画面の、カメラで撮影したりネットで保存した画像を管理するアルバムのアイコンをタップ。

その中にある、一枚の画面をタップし、表示する。



そこにあったのは、テストだと称して撮影したパフィの写真。

何枚かある中の、パフィがふざけて取ったポーズ………前世で大昔に流行った、あるアイドルの前屈みポーズの写真。


両手で挟まれた事で、パフィのただでさえ大きな乳房が、余計に強調されている。


貴明は、目を血走らせてそれを凝視しつつ、ズボンをパンツごと下ろした。

ストロークの始まりだ。



「パフィ………パフィ………ッ!」



同居人の、自分に世話を焼いてくれる女の子に欲情し、自慰にふける事。

それが、いかに反倫理的な悪徳かは貴明も解っている。


だが、あんな格好であんな巨乳をぶら下げて、今自分は16歳の肉体なのだからこれぐらい仕方ない。

そもそも、バレなければ問題はない。


そう、自分を正当化させ、貴明は妄想の中でパフィの女体を貪る。



「ああっ………パフィ………パフィのおっぱい………!」



相手はメードロイドなのだから、そう命令して抱けばいいのでは?とも思った。

しかし、それもなけなしの善意が邪魔をして、気が引けた。


だから、貴明は優しいだけ=極力他人に迷惑をかけないし、かける度胸のないヘタレ野郎なのだ。



「パフィ………ううっ!!」



滾る白い欲望を、ティッシュペーパーに向けて吐き出す頃には、貴明は元の比較的善良な人間へと戻っていた。


………それを、彼女が知っているとも気付かずに。

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