第5話・そんなに可愛い顔するなよ
「おまえの許婚はだれだ?」
「アーサーよ」
「それならいくらカミーレ相手でも、異性と容易に二人きりになるなよ」
肩に彼が顔を寄せてくる。なんだか肌の匂いを嗅がれているようで落ち着かない。
「妬いてるの? 相手はカミーレよ」
「だから心配なんだ」
「なにをそんなに不安がっているの?」
「きみのその鈍感なところが実に不安だ」
「もう、失礼ね。きゃっ」
首元に彼の吐息が触れたと思ったらぴりっと痛みが走って驚いた。齧られていた。
「痛い。なにするの? アーサー」
「お仕置きだ」
酷い。アーサーと、言いかけたのを、顎を取られて唇を塞がれた。何度も唇を啄ばむようなキス。胸の内にふわふわとした甘いものが広がっていく。
「そんなに可愛い顔するなよ」
キスから解放されてボーとしていると、耳もとで「止められなくだろう」と、囁かれる。胸がドキリとする。なんて事を言い出すのだ。アーサーは時々、わたしの知る彼とは違う姿を見せつける時がある。それも二人きりでいる時に。
こんな彼は苦手だ。どう相手をして良いのか分からない。
顔が真っ赤になって、胸の心拍数がどんどん高くなっていっている気がする。動悸が治まらなくて、今にも口から挙動不審な動きを見せる心臓が飛び出そうだ。
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