第4話・おまえの許婚は誰だ?
わたしの発言に顔をしかめるアーサー。てっきり反対されるかと思ったけど、彼の言葉は意外なものだった。
「いいんじゃないか? 行っても。アザリアさまがご一緒なら問題ない」
アザリアさまと言うのは、カミーレのお母さまでこの国の王妃さまだ。もとは黒狼族のご令嬢でアーサーのお父さまと同母の兄妹なのだ。この国では子供は父親か母親のどちらかに似る。カミーレは父親が金虎陛下で母親が黒狼族出身だが、父親の遺伝子を濃く受け継いだようで、金虎の獣人だ。
物知りの庭師の爺やから聞いた話では、大体男子は父親の特性を引き継ぐらしい。言われてみればカミーレの側室腹の二人の兄殿下たちはそれぞれ金虎の獣人なのに対し、王女殿下達は金猫や、赤犬、桃色リスの獣人の愛らしい姿をしている。
わたしやアーサーの両親は同族同士で婚姻したので、わたしは白耳兎でアーサーは黒狼の獣人なのだけど。
「じゃあ、当日馬車で迎えに来るね? リズ」
「それはいらない。俺の家の馬車で送るから」
「了見が狭いね、お兄ちゃん」
「おまえの兄になったつもりはない。さっさと帰れ。リズは俺の許婚だ。俺が責任持って送る」
アーサーは取り付く島がなかった。カミーレがお手上げといわんばかりに両手をあげた。
「そう。分かったよ。ハイハイ、お邪魔虫は退散するよ」
そう言うとそそくさと退出していってしまった。カミーレの後ろ姿を見送ってドアを閉めれば、両脇からドアに真っ直ぐ腕が伸びてきた。
ドアを前に、背後から彼の腕の中に閉じ込められた形となる。
「おまえの許婚はだれだ?」
「アーサーよ」
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