第3話・大人げないんだから


 彼にその態度は乱暴ではないかと言えば、適切だと返ってきた。わたし達の住む獣人の国ブランでは、王族の金虎族を筆頭に、黒狼族や銀狐族を始めとした、赤犬族、金猫族、白耳兎族と様々な獣人が暮らしていて、十四歳になると成人とみなされていた。


 アーサーは、わたしがカミーレを構うのを良く思っていないのだ。わたし達は幼馴染同士だというのに。幼い時から三人仲良く遊んできた。よく二人で「リズをおよめさんにする」と、言って取り合いになっていた頃が懐かしい。


 わたしは物心付いたときより、父からアーサーは自分の許婚だと言われて育ってきた。成人したらアーサーのお嫁さんになるものと受け止めていたし、カミーレのことは、年の離れた弟のような存在ぐらいにしか思っていなかった。


 カミーレはこの国の王子だ。成人すれば他国の王女、もしくはそれなりの高位貴族のご令嬢と婚姻を結ぶことになる。

 幼い子の発言ほどあてにならないと言うのは、妹たちの存在で身をもって良く知っていたわたしは、カミーレは憧れの従兄のアーサーに張り合って言ったものと認識していた。

 でもその一件からか、アーサーは極端にカミーレとわたしを接触させることを嫌がるようになった。こんな風に屋敷に乗り込んでくるくらいに。まったく────。



「大人げない」

「そういうきみは隙がありすぎだ」




 何に警戒しているのか全然分からないわ。あなたの従兄は狭量ですね? と、カミーレをみれば苦笑いを返された。




「アーサーが来ちゃったから、僕帰るね」

「おう、帰れ、帰れ。迎えなら外で馬車を待たせている」

「アーサーっ」



 年下相手に本気で相手をしなくとも。と、言えば腰に腕を回された。それをみてカミーレは「お邪魔しました」と、言って踵を返しかけ振り返った。




「そうだ。今週末、孤児院を訪問する予定なんだけどリズも来る?」

「えっ? わたしもいいの?」

「うん。非公式のものだし、前にリズが焼いてくれたチョコチップ入りのクッキーを孤児院の子供たちに差し入れたら好評だったんだ。母上もリズに会いたがっていたよ」

「じゃあ、窺おうかしら?」



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