第2話・膝カックンはしていません
「第三王子が来ているんだろう? 待ってなんかいられるものか? リズ、リズ!」
と、騒ぎ立てて実に騒がしい。黒狼族の若き族長ということもあり、自信の表れなんだろうけど、ここはあなたがいる部隊ではない。閑静な王都のお屋敷。事を荒立てるのは勘弁願いたいですわ。
「リズ!」
「は、はいっ」
部屋のドアを蹴破るような勢いで部屋のドアがば~んと、開け放たれた。ドア向こうには瞳を爛々と輝かせたアーサーがいる。
────駄目だ。これ、一睨みで死ねる。アーメン。
捕食者のような鋭い視線を向けられて、震え上がったわたしは胸の前で十字を切った。彼はゆっくりとわたしを見た後にカミーレを見て目を丸くした。そして脱力したようにその場に膝から崩れ落ちそうになっていた。
「アーサー……?」
彼の身に何が起こったの? 彼の背後から守護霊のように後をついて来ていた同族の侍女ララが脅えていた。彼女は膝カックンが得意でよくふざけて後ろから狙うのだ。でも、さすがにアーサー相手に仕掛けるほどの勇気はなかったようだ。
そこへ満面の笑みを浮かべたカミーレが、アーサーに話しかけた。
「何しにきたの? アーサーお兄ちゃん」
「黙れ。女装大好き王子。何しにきたじゃない。また王城を抜け出したと聞いて、まさかと思っていたら……ちょっと、こっち来い!」
「きゃあ、やだ~。リズ、助けて。アーサーが虐めるぅ~」
可愛いカミーレに抱きつかれて、よしよしと背中を撫でていると、不機嫌そうにつかつかと歩み寄ってきたアーサーに腕を捕まれて、問答無用でカミーレと引き離された。
「不快だ。離れろ」
「アーサー、カミーレはまだ子供なのよ」
「子供? カミーレは男だ。しかも十四になった」
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