18話 絶体絶命のピンチ



ウォーグは魔獣と呼ばれるもので、通常の狼より体はデカい。ウォーグの特徴として群れで活動しているがその主がオークであるのは誰もが知っている。


つまり早く何とかしないとオーク共も集まってくるという事だ。


「どうする? かなりヤバいぞ」


「逃げるにしても奴の方がスピードが勝っているのですぐに追いつかれるでしょう。それに……」


ウィリアムが王子を見た。足を怪我している王子と一緒に逃げるのは不可能に近い。


「幸い、1匹しかいません。今のうちに倒したらどうでしょう?」


私達3人で力を合わせれば1匹くらいなら倒せるかもしれない。


「駄目です。奴らには特殊の音波があって離れていても仲間同士で意思疎通ができるのです」


ウィリアムが私の意見に異を唱えた。

そしてそのウィリアムの言葉を裏付けるように2匹目、3匹目のウォーグが森の中から現れた。


『ガルルルル』


ウォーグ達は唸り声をあげながら私達を取り囲んで今にも襲い掛かってきそうだ。


「私が今からバリアをはります。それで騎士団が来るまで持ちこたえましょう」


「え? レイラ嬢は魔法が使えたんですか?」


ウィリアムが驚いたように聞いてきた。

グゥエルのじっちゃんから魔法のやり方は聞いている。まだ実践はしたことがないが一か八か賭けるしかない。


「まだ実践はしたことないけど、やってみます!――ウォール!!」


手を広げて魔力を放出する。私達の周りにはドーム型の透明な壁が出来た。

ウォーグ達が慌てて襲い掛かってきたが壁で跳ね返される。


「おお! すげえ」


「素晴らしいです。完璧に魔力を使いこなしています、レイラ嬢がこのような魔法が使えるとは思ってもみませんでした」


うまくバリアを作れたが思いのほか魔力の消費が早い。いつまでもつか……。

喜んでる2人にこんなこと言えるはずはなかった。できれば早めに騎士達は私達の事を見つけてくれたらいいのだけど。


「レイラ嬢、ウォールはいつまで持ちますか?」


そんな私をじっと見つめていた王子が問いかけた。やっぱり王子にはバレてたらしい。


「……もって10分くらいです」


「「!!」」


それを聞いたマークとウィリアムの顔がさっと青ざめた。

10分で騎士団が着たらいいがその可能性はだいぶ低いだろう。


「……わかりました。では、3人はこの川沿いに下に向かって逃げてください。魔物たちは私が引き止めます」


「は!? 何言ってんだよ! そんなことしたらクリス殿下は……」


生き残るのは難しい。そう言おうとしてマークは慌てて言葉をのみこんだ。


「どちらにしろ、足を負傷している私では逃げ切れるものではないでしょう。せめて、あなた達だけでも生き残れるのであれば、私はこの国の王子として本望です」


「クリス殿下……」


ウィリアムが悲痛な表情で王子を見ていた。


「…ざけんな!! 何勝手に決めてんだ!! 私は絶対お前たちと生きてこの山を下りる! クリス! おまえも! 何、諦めた顔してんだよっ。人はな、いつかは死ぬ。だけどな、生きることを簡単に諦めたら駄目なんだよ!!」




パチパチパチ


誰かが拍手している音が聞こえた。


「お嬢ちゃん、いいこと言うねえ~。お兄チャン、しびれちまったよ」



ザンッ!!


突然現れたその人は大きな大剣で一瞬で3匹のウォーグを切り倒した。




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