17話 三本の枝の教え



「「持ってきましたっ!!」」


しばらく待っていると枝をいっぱい抱えた2人が走って戻ってきた。


「ご苦労様ですわ」


「「ヒィッ!!」」


ねぎらいの言葉をかけてやったのに怯えたように2人して後退りやがって失礼な奴らめ。


「あ、あのレイラ嬢。枝を集めて何をされるんですか?」


恐る恐るといった感じでウィリアムが話しかけてきた。


「枝に火をつける。マーク様は確か火の魔法つかえましたわよね? この枝に火をつけることは可能ですか?」


「ああ、ファイヤくらいなら簡単にできるぞ」


「では、お願いします」


マークが集めた枝に火をつけた。やがて燃えた火から白い煙が立ち上って行った。


「この煙を見つけたら騎士達もこれを目印に探してくれるでしょう」


「なるほど! それは思いつきませんでした」


「そうだな!」


希望が出来て二人ともだいぶ表情が明るくなってきていた。

ふむ、ここいらで私から教えを一つ説いてやろう。


矢があればいいんだが…、まあこれでいいや。


「いいですかお二人とも。ここに1本の枝があります。1本では《ポキッ》簡単に折れますが3本では…ふんぬう! こんな感じで折れませんのよ。だから共に助け合えば困難も乗り越えることができるのです」


「「…………」」


よっしゃ! これは決まったぜ。感動して言葉もでないらしいな。


「レイラ嬢、ちょっとその枝貸してみ」


「はい」


マークが手を出すと持っていた枝を渡した。


《バキッ!》


マークはそのまま3本の枝を簡単に手で折った……。


「一人でも折れたぞ」



「ワタシ、オマエ、キライ」






「……くっ、あははははは!!!」


それまで黙って私達のやり取りを見ていた王子が耐え切れずに声を出して笑い出した。つられる様に他の2人も笑い出す。


「な、なにを言いだすかと思えば‥‥あはは!!」


ウィリアムが腹を抱えて笑ってやがる。


「笑うな!! 失礼な奴らだな!!」


怒る私を無視して笑い声はしばらくの間、続いたのだった。




「あー笑いすぎて、腹いてぇ。しっかし、レイラ嬢のおかげで気持ちが楽になったぜありがとな」


「まったくです。レイラ嬢のおかげで逆に冷静になれました。ありがとうございます」



「あ、はい。それならよかったですわ……」


なんだか褒められている感じに聞こえないのは気のせいなんだろうか。



《ガサガサッ》


その時、森から物音がして黒塊が私達の前へ飛び出してきた。

狼のような形をして全身が真っ黒な霧に覆われているモンスターが現れたのだった。


「まずいぞ、あれはウォーグだ!」


マークの焦った声を聞きながら私は今更ながらに気づいた。

煙に気づくのは人間だけじゃないという事を。





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