7話 双子の王子と王女に会いました




「レイラ様が心配されるほど食事のマナーに問題はございませんよ」

エミリーさんが太鼓判を押したのにホッと安堵のため息をついた。





翌朝、すぐにエミリーさんに今夜の王様と王妃様との食事会の話をして食事のマナーを教えてほしいとお願いしてみた。


「では、実際にやってみましょう」


とちょうど朝食で俺が食べるのを見てもらった。たぶんフランス料理の様な感じだろうとそれと同じような感じでやってみたら一発で合格がもらえた。


前世で琉生と琉生の親父さんによくフランス料理連れて行ってもらったからその知識が役に立った。

やっぱ持つべきものは友だな!


俺が死んじまって、琉生あいつは悲しんだだろうなぁ、なんせガキの頃からの幼馴染でもあったからな。でも、いつもあいつの周りには誰かしらいたからすぐに俺の事なんか忘れちまうかもな。


「特に直すところはございませんでした。さすがは公爵家のご令嬢であらせられますね」


「いえ、そんなことはありませんよ。ところで、今日は夕食までに何をすればいいんですか?」


王子様は王妃教育のために王城へと呼んだのだから勉強とかあるのではないかと聞いてみた。


「いえ、本日の予定は何もはいっておりません。昨日、いらしゃったばかりなので今日はゆっくりとお休みになられる様にとのことです。明日は各部門の教師とのお引き合わせとなります」


「なるほど…。でも一日中じっとするのも退屈だわ」


「それでしたら、城の案内を致しましょうか? それからお庭の散歩などいかがでしょう? 庭園は庭師が綺麗に手入れをしているの目の保養にもなります」


「そうねえ…。では、そうします」


部屋でじっとするのもなんだし王城の中を歩くのも何だかワクワクしてくる。

エミリー、パメラ、キキの3人に伴われて王城の中を歩きながら説明を受ける。だがこんなだだっ広い城の中を1回で覚えられるはずはなく、まあ、王城の中を歩くときは護衛や侍女がついてくるというので美術館や博物館を見ている感覚で案内される部屋などを眺めて行った。


と、廊下の角を曲がろうとしたら角の向こうからパタパタと走る音が聞こえてきていきなり小さな物体が俺の膝あたりに突進してきた。


「うわっ…」


「っと。ん? 大丈夫?坊や」


俺に突進してきたのは3歳くらいの男の子だった。ぶつかった拍子にひっくり返った子供を慌てて助け起こす。


「うぅ~…」


「大丈夫? どこか怪我してない?」


来ている服装からどこかの貴族の子か、もしくは王城にいるということは王子様の弟?


「ライアン王子! 大丈夫でございますか?!」


慌てたようにエミリーが駆け寄る。


「うう~、いちゃい。おまい、だれ?」


涙目で俺を睨みながら男の子が聞いてきた。


「私は、クリストファー殿下の婚約者のレイラと申します。どこが痛いのですか? すぐに医務室に……」


「うるちゃい! おれはおまえ、きあい! でてけ!!」


ポカポカと小さい手で殴りかかってくる子供がかわいい。

この元気さがあれば大丈夫だろう。


「あはは、会ってすぐに嫌われるとはこまりましたぇ~。では、こう致しましょう!」


そう言って俺はライアンの両脇に手を差し込んでグイっと持ち上げた。いわゆる高い高いだ。


「高い高い~」


両腕をぐいっと上げたり下げたりする。

うわっ、女の腕だと結構きついな少し鍛えないといけないかもしれないな~。


「おろちぇ~! こわいよ~、おろちて~」


泣きながら訴えてくる子供に年上としてちゃんと教えてやらんとな!


「では、ライアン殿下。いきなり初対面の方に嫌いとか殴ってくるのはこれからは止めてくださいますか?」


「もうやらない~、ぼくがわるかったです~。ぐすん」


半泣き状態になったとこでちょっとやりすぎてしまったと反省し、そのまま腕にだっこする。


「間違いを反省して謝ることはとてもいいことですよ。ライアン殿下は素晴らしい王子になれます。私もいきなり驚かせてすみませんでした」


「うん、こあかったけど、ぼくはおとこだからだいじょうぶ」


よく見ると黒い髪に瞳の色は青だけど面影がどことなくクリストファー王子に似ていた。


「おにいたま! おいてかないでっ」


またまたパタパタと足音と共に角からひょこっと女の子が飛び出してきた。

そして二人が双子だとすぐに分かった、顔がそっくりだったからだ。女の子の方は肩まで伸ばした髪とお姫様らしいフリルがいっぱいついたドレスを着ている。


「あなた、だあれ?」


兄を抱っこしている俺を見て不思議そうな顔で聞いてきた。


「私は、クリストファー王子の婚約者のレイラと申します。今日からこちらに住むことになりましたのでどうぞお見知りおきを。よろしくお願いします」


「あ! あなたがわるいひとねっ。はやく、こころからでていきなちゃい!」


「へ?」


なんかとんでもないことを言われて思わず素で驚いてしまった。さっきの王子といい、俺ってもしかして歓迎されてない?


「ライアン、エリザベス。こんなところで何をしているのかな?」


突然、王子様の声が背後からして振り返るといつもの胡散臭い笑みを浮かべながら立っていた。


「「くりすおにいちゃま!」」


「今は、お勉強の時間じゃなかったかな?」


「……はい」


「おにいちゃんがおそとにでようっていったの! わたしわるくないもん!!」


ライアン王子はシュンとしてうつむいたけど、エリザベス王女の方は勝気な目で言い返した。


「それでも、ライアンと一緒に出たのだからエリザベスも同じなんだよ? さあ、みんなを困らせないで行きなさい」


双子の王子と王女はクリストファー王子の後ろにいた侍女たちに促されて歩き出したがいきなり後ろを振り返って俺に向かって


「ぶーすっ!!!」


「はやく、でていきなちゃい!!」


とそれぞれ暴言(?)を吐いて行ってしまった。


「はあ、あなたは来て早々、何をしているんですか」


「私は別に何もしておりませんわ、殿下。お忙しいのにわざわざきてくださってありがとうございます。おほほ」

(俺はなんもしてねーぞ! お前、わざわざくるなんて暇人なんだな!)


今は近くに侍女たちや護衛がいるので令嬢らしく返したが、裏の意味もこいつならわかってくれそうだ。その証拠にわらっているのにぴくっとした。


「……とりあえず、後で話があります。それまでは大人しく部屋にいてもらえますか?」


「わかりましたわ。殿下の御心のままに」


そうして、再び自分の部屋へと戻った。

部屋に戻ってからエミリー達から聞いた話によるとあの双子の王子と王女は側妃のお子様らしい。王妃と側妃はそりが合わないらしいが、双子の方はクリストファー王子の事が大好きらしい。大好きなお兄ちゃんを取られて嫌なんだろうと言われた。

子供好きな俺にとってはあいつのせいで嫌われるのはちょっと嫌だなーと思いつつ、今度会ったときはどうやって手懐けてやろうかと画策し始めた。


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