第3話 黒色の季節



それから、1週間後。

妻が頭痛で行った病院で入院になった。

検査入院だった。

なんでも、造影剤を頭の血管に入れて検査するそうだ。

俺は『大丈夫だよ』と、妻に言いながら心の中ではアタフタしていた。



検査の結果は、もやもや病だった。

手術が必要となり、妻は手術の準備をして再入院した。



ギターは弾かれなくなった。

誰も笑わなくなった。




いや、妻だけが笑っていた。

『ここの病院のご飯は美味しいのよ』

『今日、病院のカフェでカフェオレ飲んだのよ』




俺は早く仕事から帰るようにさせてもらい、帰りに妻のお見舞いに毎日行った。




妻の手術は朝早く始まった。

ずっと終わるのを病院のデイルームで待った。

8時間かかり、手術は無事に終わった。



集中治療室で1番最初に妻が言ったのは



『ギター、弾いてる?たまには弾いてね』だった。




ホッとして家に帰り、ギターを手に取った。

なんだか、弾いてるうちに泣けてきた。


そして、ラブソングを何曲か弾きながら泣いていた。



すると、ブラッくんがスリスリと甘えてきて、俺はブラッくんを抱き上げ手術が成功したこと。

そして、ありがとうと言った。

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