第7話 ランキングというアホ。


「とびっきり、バカな"嘘"じゃったのぅ。アレは」



 万事休す。

 俺の溜め息に構わず、ラルガの話は続く。



「ともかく、魔王軍は負けたんじゃ」



 細い指を動かす。

 トコトコと、兵隊の動きを示してみせる。



「勝ち取った領土を放棄し、北の大地エザタまで引いた。魔王軍は後退していっちまった」



 それから老兵は周りを見渡す。

 洞窟の岩壁を見つめる。



「各地にあった侵攻拠点、ダンジョンを残してな」

「あぅう?」

「ああ、そうじゃ。このダンジョンもそうじゃ……昔はそうじゃった」



 ソフィの言葉とも言えない音に、ラルガは頷く。



「今はもう戦争なんて名ばかりの状況じゃからな。だから、このダンジョンもかつての“駐屯地”だった頃の機能は失われちまった」

「ああぅ?」

「残念かって? むしろその逆じゃ。今のココは昔よりもずっと良くなった。メローのおかげかのう」



 俺は、あくびをする。

 今の所、俺にとって有用な情報は無い。



「まあ、ダンジョン評価制度ランキングなんて、面倒なモンがなきゃ、もっと良くなるんじゃが……こればっかりはな」



 二回目のあくびを飲み込む、俺。



「ダンジョン・ランキング……?」



 思わず言葉が出た。

 しまった、と口を手で押さえる。

けども、遅い。



「お前さん、喋れたんか!」

「う、うん……しゃべれるようになった」

「そうか! めでたいのぅ!」



 ラルガは俺を抱き上げる。

 高い、高すぎる。

世の赤ちゃんは、こんな拷問を耐えているのか。


 ソフィに助けを求めようとするも、見当たらない。

 この一瞬でどこに行った?



「それで……その……だんじょん・らんきんぐって?」

「おう。イクス様に代わり、魔王代行をしている小娘、リヴァロが考えた評価システムじゃ」



 ラルガの顔の宝石の光が、左上に集まる。

 人間で言う所の左上を見る仕草。

過去を思い出す仕草……だろうか?



「ダンジョンに入った冒険者の数、その中で戦闘不能にした者の数、あとは単純にダンジョンがどれだけ周りへの影響力を持っているか。その三要素を基準にダンジョンに格を付けるのじゃ」

「そんなことをして……どうするの?」

「さぁてのう……ただ、上位のダンジョンを運営する“ボス”共が四天王入りしたって話もある」



 俺は考える。


 ダンジョンに入った冒険者の数。つまり、来場者数。

 その中で戦闘不能にした者の数。つまり、仕事が出来ないほどに“ヌマった”ファンの数。

ダンジョンが持つ影響力。これは、単純にコンテンツとしての影響力。


 そうやって言い換えると、まるでvtuberの人気ランキングだ。

 そんなアホを考えていた。

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バ美肉Vtuberが転生でリアル美少女化したので、どうせならアイドル目指す話。 松葉たけのこ @milli1984

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