第4話 ダンジョン・マスターの子
俺は、異世界に生まれた。
元気な女の子として、バッチリ転生した。
それから、半年経った今、俺の状況を説明しようと思う。
複雑だから、全てってのは無理だけど。
「いい子、いい子ね。ケイ」
ほの暗い洞窟の奥、ヘドロだらけの地底湖の水辺。
赤ちゃんの俺を抱える、青髪の人魚。
彼女は優しく俺を揺すって、ほのかに笑う。
「かわいい、かわいい、私たちの天使」
彼女の名前は、メロー・ガル・サファイア。
半人半魚の美女にして、魔物にして、怪物。
そして、俺の
「天使はマズイよ」
気弱そうなトカゲ男がメローにそう注意する。
彼の名前は、ヤーライ・コル・サファイア。
メローとは違う怪物、呪われしリザードマン。
チャーミングポイントは、全身を覆う緑色のウロコ、青い爬虫類な瞳。
そして、俺の
「僕たち、一応、魔王の手先だからね?」
「いいじゃない。どうせ魔王サマだって、こんな過疎ダンジョン忘れてんだから」
「……君は、このダンジョンのマスターだろ。無責任な物言いは、よしなって」
「でも、可愛いじゃない。コレはもう天使でしょう? ね?」
メローがヤーライに俺を抱えて見せる。
「ばぶ」
俺はここぞとばかりに、かわいこぶって、
どうだ、可愛いだろう、俺は。
「ぐっ……でも、ソレとコレとは話が――」
揺らぐヤーライに対して、メローはイタズラっぽい笑みを浮かべた。
そして、俺の隣から、“もう1人”を抱え上げる。
「ソフィアはどう思う? ん? 可愛くないって?」
そうやってメローが見せた、もう1人の赤ん坊。
下半身には足がなく、代わりに立派なウロコとヒレが付いている。
彼女は、幼き人魚にして、メローの実の娘にして、俺の妹。
彼女は、ソフィ・ガル・サファイア。
「ばぶぅ!」
ソフィが甲高い声を上げると、地面からヘドロが浮き上がる。
球状になったヘドロが、宙を回る。
ソフィを見守るように。
「ほら。ソフィアは、もうスキルが使えるのよ」
「でも、君の“歌”は、受け継がれなかったね……」
「分からないじゃない。まだ1歳にもなってないのよ。コレから発現するのかも」
「……そうだね。上手く育ってくれるといいね」
という事で、俺の説明をまとめよう。
俺は転生したのだ。
実の親から捨てられた、人の子として、生まれ変わった。
「2人は上手く育つわ。ラスボスとして……ね」
それから、ダンジョン奥深くで暮らす、
“破滅の歌”という攻撃手段を持ち、冒険者を殺すと言われるモンスター。
――ラスボスの子として、拾われた。
「なんてこったい……ばぶ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます