第3話 アイドル生誕 in_異世界


「な~んちゃって」



 黒ギャル女神は、クスっと笑う。



「ははっ、そんなの無理無理ー。君、ニートだし」

「違うから。配信者は引きこもりであってもニートじゃない! あくまで、俺は“元”ニート!」

「ソコにこだわってんの、マジモンっぽいな……」



 笑ってたかと思えば、本気で引かれた。

 ギャルのテンションは分からない。



「……早く転生させて下さいよ」



 ちょっと気落ちしながらも、俺は転生を催促する。



了解りょ。本当に、“指定はコレで全部”なんだねー?」

「え、はい」

「ふーん……」



 妙な間の後、黒ギャル女神は右手を掲げる。

 すると、どこかで鐘の音が小さく鳴った。



「あ、1つ言っておくけど、今回の転生は特別だから」



 周りが暗くなっていく。

 視界がボヤけて、頭がボーっとしてくる。

 血の気が引いていく感覚がする。



「次死んだら、その次は無いよ」



 それは、どういう意味だ?

 そう聞く前に、俺は意識を失った。


 ――しばらく、暗転。


 その後、意識を取り戻す。

 自分の泣き声で、目を覚ます。



「おぎゃぁあああああ!」



 すると、俺は暗闇の中にいた。

 ヘドロに塗れていた。



「どうしましょう、ヤーライ」



 誰かがこちらを覗き込む。

 大きな緋色の目玉が、目に焼き付く。


 赤ん坊の俺を覗き込むその女。

 青い髪のその美女は、人間ではなかった。



「人の子が捨てられてるわ」



 青い髪の人魚だったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る