第2話 怒らないで、女神さま!


「a、あー」



声を確認する。

Vでは一番大事だった部分。

前世では、自前でブチ通したけど、今回はちゃんと女だ。

それもオタ受けしやすい、アニメ声。



「体格は小さめで、守りたくなるような感じ……」



ケモ耳を生やした、金髪の少女は自分の姿を見下ろす。

髪はツインテール。瞳は青色。

背は小さいが子どもよりは大きい。

ロリではない。あくまでロリな身体だ。



「マジのロリだと、健全なアイドルとして推せないからな……それに性的な魅力も多少ないとだから」



服は黒のゴスロリ系。

いわゆる、先駆けのバ美肉おじさんたちからインスピレーションを受けたデザイン。

黒を基調として、金色の刺繍で視線を惹きつける。

けれども、顔よりは目立ち過ぎないように、模様は地味めで。



「他人に頼むのは久しぶりだから、緊張したけど」



良かった。全部オーダー通りだ、と安堵する。

俺は理想のアイドルになれたのだ。

まあ、見た目だけだけど。



『いい? Vtuberとアイドルは同じようで違うの。あなたは電子の世界にもう一度生まれるのよ』



頭の中をとあるセリフが躍る。

生前によく聞いたセリフ。

そうだ。俺はホントに“もう一度”生まれる。

だから、今度こそは生まれ変わってやる。



「ホント、そんな弱っちい身体を選んでいんすかー?」



心配そうな言葉……とは裏腹に、興味なさげに女神が聞く。



「その身体をここで選んで、生まれ変わりの手続きが終わったら、もう変えられないけどぉ、ホントのホントにいんですかー?」

「いんですよ。オレは本物のアイドルになるんですから」

「ホントのホントにー?」

「そうです」

「ほぇ~。ま、がんばりゃいんじゃないですか?」



こっちも見ずに言い放つ、黒ギャル女神。

その無礼さに俺の眉がピクピクする。

こいつは深夜のコンビニバイトなウーマンか。

お釣りの小銭とか投げてくるタイプだろ、絶対。



「……まあ、アイドルなんかでマジ成功したら、マジヤバイですけどねー」

「何がヤバイんですか」

「そりゃあ、アイドルって言ったら崇拝……つまり信じたっとぶ対象っしょー?」

「まあ、そうかもですけど……」

「かもだったらぁー」



女神はマスカラで黒々としたまつ毛をかっ開く。

その銀色の瞳孔を全開にする。



「ウチらの競争相手ライバル……敵になるかもなんで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る