バ美肉Vtuberが転生でリアル美少女化したので、どうせならアイドル目指す話。

松葉たけのこ

第1話 宇宙一、アホな男


「えーっと、あなたは死にましたー」



 真っ白なドレスを着た、こんがり焼けた肌に栗毛の女。そいつはネイルばりばりの爪でコピー用紙の束をつまみ、その内容を読み上げる。



「ウチはヘルマ。転生担当の女神でーす。ちょりーっす」

「ああ……ちょりーっす」



俺は状況をまったく理解できなかった。

なので、取りあえず流れに任せることにした。

そうすれば、何がどうなっても、俺の責任ではないからだ。



「あなたは30歳そこそこまでニートを続け、しかして最近になって一念発起。自作のイラストを使って美少女Vtuberのおじさんとしてデビュー。その後、一躍個人Vとして有名になりました」

「はあ、こりゃどうも」

「そして死にました。んで、ここ天界。はい、おつー」

「あっ……アッ……おつー?」



ノリがしんどい。しんどすぎる。

何だこの女神。ギャルか。原宿か!



「っつー訳で、転生ラノベの主人公みたいにパパっと転生してもらいまーす」

「お、おお……」

「そんで最終目標は、異世界を侵略しようとイキってるキモヲタ魔王の討伐でーす」

「おお……!」

「最強勇者として、汗水たらして頑張っチョリーッス。容姿、スキルは自由に選べまーす。試着、試用の際はそっちの試着室でどうぞー」



おお、転生だ。よくある転生ものだ。

この後、勇者になれるのか俺。

俺TUEEE! とか一度はしてみたかったから、そんなのもアリだな……。



「いや……」



待てよ俺。勇者というのは“派遣社員”と変わらないのではないか?


与えられた仕事を死ぬまで必死にこなさなきゃいけない仕事。

要するにブラック、社畜……いや奴隷ではないか。

配信者引きこもりから、いきなりそんなものになったら、俺はたちまち過労死するぞ!


どうせ死ぬなら好きなことをやって死にたい。

そう思って、Vの世界にだって入ったのに。

……待てよ?



「そっか……好きなことなら、まだやれるじゃないか」

「? ……今何か言いましたー?」

「女神さま、俺――」



異世界だって出来るじゃないか。

アイドルが!



「魔王討伐しません」

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