小蠅が飛んでいる。

 うるさい。

 真冬なのになんでそんなのが出るんだ。

 あぁ、もう。

 俺の身体の周りで飛び回るなよ。

 コバエをウザがっている、そんな時。

 鍵を掛けているはずのドアが空いた。

 だれだ。

 もともと部屋の隅からは動けないが、隅にほんの少し気持ちだけ寄って身構える。

 訪れたのは防護服に身を包んだ、幾人かの人たち。

 訪問者の一人は俺の姿に気付いたようで、一言だけ呟いた。


 「こりゃ、ひどいな」


 あぁ、確かに、体、持ってかれているもんな。

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小話箱 みち木遊 @michikiyu

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