合流と撤退

「ちょっとライト! ボロボロじゃん!?」


「ごめん…… 遅くなった……」


「ギンナ、ヒールお願い!」


「はい、ヒール! あっ、MPが……」




 こちらも激戦だったのだろう。周りのみんなも身体に傷は残っていないものの、装備はボロボロになってしまっている。




 それに……




「僕はもういいよ。これ以上、ダメージは受けない。」




 沈んでいるリーヒャ先輩を見やる。




 間に合わなかった。悠長に回避や、バフの事を考えたりしてた僕の責任だ…… 




「ライト? 何考えてるかなんとなくわかるけど…… 大丈夫。」


「あぁ、あいつはお前とは違ってすごかった。お前とは違って! 」


「ホノカ…… モミジ姐さんさん……」


「もうモミジでいい! その代わりこっちは変態と呼ばせてもらうからな!」




 ちょっと言ってる意味が分からなかったけれど、少し元気になった。




「まわりの戦況も安定してるし、ちょっと休もっか。」




 そう提案して、戦火広がる戦場を横切っていく。誰かが火魔法をぶっ放したのか地面は焼け焦げ、人の悲鳴と歓声が響く。うーんレイド。




 悲鳴を上げながら逃げ惑うプレイヤーを追いかける子氷烏には羽をブッパなしつつ、城壁に向かって歩みを進めていく。羽飛ばしは通常攻撃なのでコスパがいい。




「ありがとう!」




 の声には笑顔で会釈し、逃げるばかりだったにも関わらず




「横取りだ!」




 と糾弾してくる奴には、激しく会釈しながら5人連れだって歩いていく。




「ライト頑張ってるねぇ……」


「助けてやったのだからもっと上からでもいいだろう! やはりお前はよく分からん…… そういう所が変態なんだ!」


「モミジ姐さん…… 私はライトのいいと思います。下手に揉めるよりは。ね、姐さん?」


「お前……」




 感謝されるとちょっと気持ちが晴れていく。


 でも、リーヒャ先輩はさっきから口を開かない。


 聞いた話だとリーヒャ先輩の負傷が原因で、ケーマさんのスキルが暴発したようだ。


 効果からしてオリジナル。リスキー過ぎたらしいが、ちょっと羨ましい。




「リーヒャさん……」




 ホノカが心配そうに顔を窺うけど、反応は芳しくない。




 と、城壁にたどり着こうかというとき、脳にアラームが鳴り響く。




「!?」




 くしゃみシステムみたいな感じで、何か危険を知らせているのだろうか? そう考えて身構えるが、一向に襲撃などはない。




「どうした変態?」


「頭の中にベルが鳴って」


「それ、フレンドコールじゃないか? ははっ、お前友達少なそうだもんな! そりゃあ知らなくても仕方ない。」


「いや、友達なら眼の前に鬼人の女の子がいるけど……」


「ひゃっ、な、なに言ってるんだお前!」




 モミジはいちいち突っかかってくるなぁ。




 とにかく、これはフレンドコールだということが判明した。悲しいかな、確かにモミっちゃんのいう通り、僕のこの世界のフレンドは4人。そのうち3人がここにいて……




 つまるところ、




「もしもしケーマさん?」


「あぁもしもしライト。いやぁしくっちまった。」




 電話の相手はケーマさん。




「ケーマ!? ライト、今ケーマと話しているのか!?」




 途端に色めきだつリーヒャ先輩を目でとめつつ、先を話すように促す。




「それでな、目覚めたらギルドの真横の教会だったんだが…… ステータスが3割減でな。少し合流まで時間がかかりそうだ。いやぁ、初デス焦っちゃったぜ。」




 思った以上に気楽そう……?




 デスした人と話すのは初めてだけど、結構平気なのかな? それでも僕はできないけれど、ちょっと心が軽くなった気がした。




「ケーマさんは無事でしたか。それは良かったです!」


「ライト、ライトすぐに会いに行かせてくれ!」


「ちょっと時間がかかるみたいですが……」


「そう、か……」




「あっライト! 戦場でやったみたいに、ケーマさんを抱えて飛んで来れば……?」


「げきつい……  こわい……」




 モミジが植えつけたトラウマががが




 が、仕方ないので飛んでいくことにした。




「わかったよ。行ってくる。櫓で待ってて!」




 4人にはそう呼びかけ,門をくぐり手を振って別れる。




 そろそろまた氷獄鴉が出てくる頃だろう。リーヒャ先輩の沈んだ顔を思い出しながら僕は急ぎ飛んでいく。




_______

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