襲撃

「……ィッタッ! 何が起こった!? 」




僕は、足への一発を皮切りに襲いかかってきた氷の弾丸の群れを、木の影に飛び込むことで回避する。


それでも何ヵ所かにはカスってしまったし、足の傷も深刻だ。血の代わりであろう、赤色のポリゴンが止まらない。


レベルが低いことによる低HPによって、一撃ちょっとで殆ど瀕死だ。




「ん……ゴクッ」




しかし、それは逆に回復すべきHPも少ないと言うこと。ポーションを口に含めば、全身から溢れていたポリゴンは消えHPが全回復する。




「攻撃力的にも圧倒的に格上…… ラドーやマスターもこんな奴が居るなんて言っていなかったから、恐らくコイツのことは僕しか知らない…… これは死んじゃうかもしれないなぁ」




ドドドドドドッ!




バキッ!ベキャッ!




「ヤバいっ! 」




不気味な音と共に、隠れていた木が破壊され思考の停止を余儀なくされる。




次の木の陰へ飛び込み、退避し一息付く。




「チッ、コイツと戦っても勝てる未来が見えない! 仕方ない! やれるだけやる! 情報を持ち帰る! 」




兎にも角にも、僕は未だ敵の姿を見てすらいない。きっとこの敵を放置すれば、ゴブリン以上の脅威が街を襲うだろう。


その時、少しでも有利にコイツと人々が闘えるように……"僕が"情報を手に入れなければならない。




「【強弓】【四矢】【火矢】」




相手は氷を多様してくる。火は良く効くだろう。そう思いながら、何時もの様に魔法を弓につがえる。




木から半身を出し、氷弾が飛んでくる方向へ照準を合わせる。辺りは気温が下がった影響か、霧がかり敵の姿は良く見えないが……




「シッ!」




打ち出された矢は四本に分裂し、着弾。溢れ出した炎は霧を晴らし……




「見えたっ! あれは……」




目に映ったのは巨大な青い影。




「鳥? それも……カラス!」




上空に羽ばたくのは、所々羽が氷の結晶を纏う巨大な鳥であった。




「うわっ! 」




少しじっくり見すぎてしまったようだ。敵――《仮称:青カラス》の羽の先の結晶が光ったと思うと同時に、氷の散弾が打ち出される。




先ほどの氷弾よりも威力は低そうだが、その範囲はとても広い。


僕は何発か被弾しながら、また木の陰に隠れる。




「クゥエェェェェェ!!! 」




敵攻撃は続く。先ほどの攻撃でも、そこまでのダメージは与えられていないようだった。




ポーションの残りも心許ない。




まぁ、こんな闘いを経験したのはこれが初めてじゃあない。毎回、なんとか乗り越えてきたんだ。


……まぁ最後の闘いは別として。




圧倒的な、されども悪魔ヤツほどではない強敵との闘争に体が疼く。




……さて、逆転の策を探そっか!

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