偵察

「よし、これが地図でこれがポーション、魔力ポーション、体力ポーションだな。それぞれ三本ずつある。支給品だから、ヤバかったらドンドン使ってくれ」




再び階段を降り、受付に行くとラドーからアイテムを数種類渡される。




「ありがとう! それじゃあ遠慮無く使わせて貰うよ。」




アイテムボックスに貰ったものを詰め込み、出発への意気込みを入れる。


故郷でもソロで冒険に出ることは何回かあったけど、基本パーティーで行動していたから何だか新鮮だ。




「気を付けて行ってくるのよ? やっぱりVRでも死んじゃうのは怖いと思うし…… 頑張ってね!」




「うん! ホノカも塾頑張ってね!」




「えぇ。夜にはまたログインするから、時間が合えば一緒に遊びましょ」




そう言うと、彼女はパパっとウィンドウを操作しフレンド申請を送ってきてくれた。


僕はそれを承認し……僕の真っ白だったフレンドリストに『ホノカ』という名前が刻まれた。




「これからも宜しくね! 」


「宜しく! じゃあね」




別れを済ませると、彼女は光の粒となって昇って行った。これがログアウト演出らしい。




「それじゃあラドーさん、僕も行ってくるよ。」


「あぁ、気を付けてな! お前ら〔移住者プレイヤー〕は死んでも生き返るらしいが、それには代償があるらしいじゃねぇか。くれぐれも生きて帰ってくるんだぞ! 」


「りょーかいっ! いってきまーす」




弓を背負い、ギルドから出発する。




そういえば、ラドーが言ってた復活の代償ってなんだろう?


気になったのでヘルプで調べてみると、そこには


『移住者は死んでも生き返るワン! でもその場合、蓄積された経験値と、その後24時間の獲得する経験値が減少してしまうワン! ゾンビアタックは慎重にワンー』




と書かれていた。




……これはダッキー著だな。うん。






――――――――――――――――――――




そんなこんなで地図に描かれた場所まで歩いていると、森に着いた。


地図に書かれた集落までは、あと一キロ程度の様だ。




「うー……寒っ! こんな寒いなんて聞いてないよぉ……」




森が深くなるにつれて、日光は背の高い木によって遮断され暗くジメジメとしてくる。




そして何よりとても寒い。




「ふぅ……そろそろかな? 」




吐く息は真っ白になっている。




「よしっ、見えたっ! 」




少し歩けば、前方に明らかの何者かの手が入ったと思われる壁が見えた。


地図と照らし合わせてもここで間違いないと思われる。




「ほっ、よっ、っと! 」




背の高い木に登り、集落とおぼしきものを偵察する。




すると大きな違和感が……




「村が…… 凍ってる?」




目に映る集落には雪が積もり、所々に氷柱がたっている。そして白銀の世界の中に幾筋かの赤線が引かれている。




生物の気配はしない。




「なにが起こったんだ!? ふッ……っと!」




そしてそれらを視認すると同時に、僕は木から飛び降りる。この情報をギルドに真っ先に伝えなければならない。




僕は走り出す。




「ふっふっ瓶!!」




良かった。AGIは元々の身体能力にプラスで働くものみたいだ。低ステータスの僕でも、なんとか走ることができている。




「はぁはぁ……、ん……ゴキュッゴクッ!」




一キロ程走ったところで、一瞬足を止めてスタミナポーションを一気飲みする。




「ぷはぁぁぁ! んぐっ!」




飲み終え、瓶から口を離したところで……






氷の礫が僕の左太腿を抉った

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