只今街よ
「はぁ、追加で10匹はキツかったわね。大分疲れちゃった……」
「負けるかと思ったよ……魔力も切れかけてたしね。」
「まぁ無事戻って来られたから良かったわよ」
あの後、僕らは《type雛》の詳細を軽く見て、街へ帰っていた。でも、丁度森から出ようってときに10匹のゴブリンの群れとエンカウントしてしまったんだ……
索敵を怠ってしまったせいで接近されてしまい、危うく殺られてしまうところだった。
まぁ至近距離での戦闘の為に、ゴブリンからドロップしていたナイフを使ってたら【短剣術たんけんじゅつ】のスキルが生えてきたり、レベルが上がったりして色々お得ではあったんだけどね。
「てかライト、貴方のナイフ捌き凄かったわね!? どんな生活してたらナイフをあんな綺麗に振り回せるの?」
「あー、昔取った杵柄? って奴だよ。他のフルダイブゲームでよく使ってたんだ。」
「へ~凄いわね! 」
「ありがとう」
まぁ別ゲーでってのは嘘で短剣を使えるのは前世で使っていたからなんだよね……
接近されたら即死亡、なんて弓術師なんて半人前だからってお父さんにしごかれたんだった。
あぁ、お父さんは元気だろうか?
「所で、ラドーおっそいわねぇ。」
「そうだね、どうしたのかな?」
僕たちは今、冒険者ギルドにいる。依頼の達成報告と、ドロップアイテムの精算の為だ。しかし、受付をしてくれたラドーが報告を聞き素材を受け取って裏に行ってから早10分が経った。彼はまだ帰ってこない。
「っと、待たせたな。申し訳ねぇ」
噂をすれば影?だっけ。考えていた間に丁度現れるスキンヘッドギルド員。
「あー、ちょっと裏に来てくれるか? ウチの支部長マスターがあんたらに話があるみてぇなんだ。」
「マスターが……? 私達今日冒険者始めた新米よ? なんの用かしら」
「だからそれも裏で説明するって。早く来いよ」
「あー、行こっかホノカ? 」
「わかったわよ! ハッ、てか1日目でギルマスと人脈作れるとか勝ちイベなのでは……?」
ホノカが相変わらず商人気質だったことで謎の安心感を得ながら、僕らは受付の奥へ移動していく。
長い廊下を歩き、階段を登りして僕らは三階へと辿り着いた。
前方には大きな木の扉と、それに下げられた『ようこそ支部長室へ』という看板があった。ラドーはその大きな拳で、ドアを三回ノックしながら叫ぶ。
「おやっさん、俺だ! さっき話したホノカとライト、連れてきたぞ!」
『お~、入るがいいぞ』
扉の向こうから老成された声が微かに響き、
ガチャッ
扉がひとりでに開いた。
「わわっ、凄い! どーなってるの? 」
「ホッホッ。【念道力】というスキルじゃよ。離れたものを動かせるのじゃ。」
部屋の中から声をかけてきたのは、三角帽子にローブを着て、そして杖を持った典型的な魔導師の老人だった。
ヨボヨボとはしているが、発する圧はとても強く嫌でも実力差を感じさせられる。
「ほら、緊張せずとも良い。入ってくるのじゃよ? 」
「あっ、ごめんなさい。失礼致します」
僕は焦りながらも部屋に入り、ホノカもそれに続く。
老人は笑みを浮かべながら椅子に座るよう僕らに促し、座ったことを確認すると話し出した。
「ホッホッ。まず儂はギルドマスターをしておる、シャンドレじゃ。よろしくの~」
「「よ、宜しくお願いします!」」
「さて、今日お主らを呼んだのは他でもない、仕事の依頼じゃ。」
はて、登録初日で特に実績を上げていない僕たちになんの相談だろうか?
「今、我がギルド支部に登録しておる冒険者の中でも、実力が上位の者達は隣国のダンジョンに自分たちの力を高めに言ってしもうた。……まぁそれはいいんじゃが、我が町の戦力は極端に下がっておる。そこで、じゃ」
なるほど、事情はわかった。で、その仕事というのはなんだろう?
「お主らにはゴブリンの巣の調査を依頼したいのじゃ。」
「巣の調査、ってなんなの?」
「あぁ、この街の森にはゴブリンが住み着いておるのは知っておろう? 其奴らの巣に、どれくらいの数や種類のゴブリンが居たのか確かめてきて欲しいのじゃ。」
ふむふむ?
「最近ゴブリンの発生数が多い。確実に巣ができておるじゃろう。しかし、いかんせんこの街に残っている冒険者は弱い。そこで、じゃ。二時間程でゴブリンを16匹も狩ることのできる、お主らに頼みたいのじゃ。」
「あぁ、わかったよ。できるだけやってみる」
ゴブリンの巣か……厄介だけど、調査だけならなんとかできる筈。
「本当かの! 報酬は沢山支払う。頑張って欲しいのじゃ!」
武器も更新したいし、防具も欲しい渡りに船だろう。
「あっ、ホノカごめん! どうする?」
「うーん、私はパスしとくわ。ごめんね? でも調査には向いてないと思うし、今から塾だから……」
「あ、了解! 頑張ってね!」
ホノカは来れない、か。残念だけど……塾なら仕方ないよね。
「決まったかの? それじゃあ、受付で巣の位置が描かれた地図を受け取ってくるのじゃ。宜しく頼んだぞ。」
「わかったよ!」
さぁ、この世界に来てから二回目の、クエストスタートだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます