男子学生2人がひったくりを捕まえる話

山上コウ

ひったくり犯を捕まえろ!

それは9月の昼頃、学ランを着た高校生のユウトとリュウジの2人がアイスを食べながら家に帰っている途中だった。

アイスを咥えながらユウトがリュウジにつぶやく。


『なあリュウジ。』

『ん?どした?』

『あのさ、9月なのに8月と気温がほとんど変わってないはずなのにさ、なんでもう衣替えなんだろうな。』


ユウトはそうリュウジに愚痴ると、リュウジは冷めた感じで返事をする。


『どうでもいい。そんなことより俺はこのアイスが当たるか気になる。』


アイスくらい冷たい反応にユウトはムッとしたがいつもの事かと思いながらも、リュウジが焦りそうな嘘を口にする。


『そういえばそのアイスってさあ、本当はあたりなんて入ってないんだぜ!』


そう言い自分が手に持っているアイスを一口で食らい、その棒をほらなと言わんばかりの顔でリュウジに突きつける。


えー!とリュウジはかなりショックだったのだろうか口を開けて固まった。

リュウジがショックを受けるのも分からなくはない。

彼は物心ついた時からからあたりがでると信じて冬以外は必ず毎日一本食べ続けてきたのだが、友達の心ない嘘にショックを隠せなかったようだ。


そんな固まっているリュウジを見てユウトはにやりと微笑んだ。

それもそうだリュウジは、学校では知らない人はいない超クールボーイで有名なのだから。

授業中にスズメバチが教室に入ってこようがゴキブリが足元にいようが、真顔で追い払い何事もなかったかのように席に着いてクラスのみんなからは冷えピタと呼ばれている、そんな彼がこんなにも目を泳がせ、口を開け、固まっているのだからユウトはさぞかし喜んでいるのだろう。


5分くらい経っただろうか、リュウジはまだ固まっているので流石に心配したのか、ユウトはリュウジの顔の前で手を振るが反応がない。


『アイス溶けるぞー。』


呼びかけても反応がない。

その時リュウジの持っているアイスが溶け地面に落ちてしまったのだ。

ユウトは落ちたアイスに視線を向けた時、目の前から物凄い大きな声が聞こえてきた。


『やったー!』


ユウトは声のする方向を見ると、その声の主は今まで固まっていたリュウジなのだから。

リュウジはぴょんぴょんうれしそうに飛び跳ねていた。

ユウトは何がそんなにうれしいのか分からず首を傾げた。


『見ろ!ユウト!あたりだ!あ・た・り!これ一本でまたアイスが手に入るんだぜ!それでそのアイスでまたあたりが出たらアイスがもらえるんだぞ!

アイスを無限に食えるんだぜ!いいだろう!』


そう言いながらリュウジはユウトに棒を見せつける。

ユウトはその棒に目をやり、あたりという文字を見て。次はユウトが口を開け固まってしまったのだ。

そんなユウトを見てリュウジは『あっ。』と思い出したかのようにユウトに話しかけた。


『そういえばお前さっきあたりなんてないって言ってたよな?これはその罰だ!』


とリュウジはユウトの頬に思いっきりビンタした。

ユウトはすぐに目が覚め、頬をおさえながら2人はまた歩みを進めた。


少し歩いたところでユウトはリュウジに話かける。


『もっかいあたり棒みせてよー。』


その要望に応えるようにリュウジはポケットからアイスの棒を取り出し見せようとすると、うっかりリュウジは落としてしまったのだ。

リュウジはやれやれと思いながらも拾おうとした瞬間遠くの方から声が聞こえてきた。


『ひったくりよー!!!』


おばさんの声だった。

2人はその声の方向を向いた瞬間、2人の間を自転車が『邪魔だ!』と強引に通っていった。


『今の自転車あぶねえよな。』


そうユウトがリュウジに話しかけるとまたリュウジは目と口を裂けるくらい開けていた。

ユウトはその原因がなんなのかすぐに理解できたのだから。

それはリュウジの人生で初めてのあたり棒が真っ二つに割れていたからなのであった。

きっと今の自転車がひいたのだろうと思いまあまあとリュウジをなぐさめようとすると彼はもう目の前には居なかった。

何故なら彼は今の自転車を追いかけていたからだ。

その後に続くようにユウトもリュウジを追いかけに行った。

すぐにリュウジに追いつき自分の目標も自転車になった。

すると目の前で追いかけていた自転車がツッコケたのであった。

転んだ自転車の乗用者にリュウジはユウトに喰らわせたくらいのビンタを彼にもお見舞いしていた。

それにしてもユウトは自転車の人が何故転んだのかが気になっていた。

地面に目をやると先程リュウジが落としたアイスで転んだというのが分かった。


『それにしてもこの人男なのに女物のバッグを持ってないか。』


そうリュウジが謎に思っているとユウトはその謎に対して即答した。


『そんなの決まってるだろう。』

『え?』

『こいつがひったくり犯だからだよ。』


そういいながらユウトはまた彼に一発ビンタを叩き込んだ。


そんな事をしていると後ろから警察の人が駆けつけてきてひったくりはんに手錠をかけたのだ。

どうやらひったくり犯で間違いなかったようで無事ひったくり犯を捕まえる事ができたのであった。


バッグの持ち主のおばさんにお礼としてアイスをいただいた。


ユウトとリュウジの2人はアイスを食べながらまたたわいもない話をしている。


『あーあ、せっかくの人生初あたり棒だったのに!真っ二つになって交換出来なかったわ。』

『何言ってんだなら今お前の手に持ってるのはなんだ?』

『うるさい、次も当ててやるぞ!』

『ははは!頑張れ!頑張れ!』


こうして2人は家へ帰るのであった。


『あっ!あたった!2本目!』

『うそーん!』

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