第4話 新たなクラスは最高だったらしい

 4月に入った。

 新しいマンションの生活は快適であるにも関わらず、居心地の悪い思いをしながら過ごした。

 それにしても、なんだって急にこんな場所に引っ越したんだか・・・。まさかあの車をくれたっていう人に世話になってるんじゃないだろうな。

 背中に嫌な汗がつたう。・・・まぁ俺には関係がないか。突然なことを言い出す両親を今更心配したところで意味がないし、俺には関係がない。


「とりあえず学校に行ってみるか。クラス発表もされてるはずだし」


 エントランスを出て、敷地内にある駐車場を抜けてかなり遠くに気持ち程度に設置してある駐輪場へと向かう。

 自転車は俺の1台だけ。他は高そうなバイクが数台停めてあるが、絶対何があってもその近くには停めない。

 自転車に乗ってこぎ出せば、学校までの道はとにかく快適だ。なんせ小高い丘の上にある一等地。しかも俺の住んでいるマンションはその中でも1番高い場所にある。

 しかし分かると思うが帰りは地獄だ。帰って速攻で風呂に入るのが日課になっている。

 まぁ今帰りのことを考えても仕方がない。

 学校が近づくにつれて知った顔がちらほら見えてきた。まだ春休みということもあって、生徒自体は少ない方だが俺と同じように事前にクラスを把握しようとしている奴はやはり何人かいたようだ。


「よぉーす、ノブも来ると思ってたぜ」

「なんだ、秀翔もきてたのか。で、今年はどうだった?」

「なんとだな!俺あの美少女と同じクラスだったぜ!!」


 親指を立てて俺に満面の笑みをこぼす親友。綾奈に見られれば絞められること間違い無しだ。なんで今日に限っていないんだよ・・・。あぁ部活だったか。


「よかったな。その笑み止めろよ、殴りたくなる」

「なんでだよ!?」


 俺も自転車を駐輪場に停めて確認に向かう。


「そうだ、ノブも面白いクラスに入ったかもな。ってかかなり面白いかも」

「面白い面白いうるさいなぁ、何がそんなに面白いんだよ」


 そんな調子で張り紙の前にたどり着き、そして俺の名前を確認する。

 あ、優里さん3組なんだな。ってことは秀翔も3組か。

 って綾奈も3組じゃねーか、どうりでテンション高かったわけだ。


「俺は~・・・」

「な?面白いだろ?」


 俺の名前も3組に書かれている。ちなみに下心丸出しでこの張り紙を見に来た奴らもいるせいで、俺達の周りはかなりうるさい。歓喜の雄叫びに魂の抜けたようなため息。


「あぁ・・・まぁそうだな」

「素直になれよ、おい。最後の年に大チャンス到来じゃねーか。今年はチキッてないでちゃんと告白するんだぞ。万が一にもオッケーされたらダブルデートでもしよーぜ」


 とりあえず一発肩を殴っておく。

 しかし嬉しさというのはどう取り繕っても漏れてしまうものだと思う。

 隣でニヤニヤしている秀翔を俺にはどうすることも出来なかった。

 そして気がつかなかった。俺を見ている人物の存在に。

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