第2話 窓際のあの子は人気者らしい
「おっはよ~!」
音に例えるのならビシッバシッとでもいいそうなくらい強く叩いてくるのは、2年連続同じクラスだった
何故にコイツは朝の通学路の段階でそれほどまでに元気なのか。正直羨ましいとさえ思えてしまう。
冗談だ。俺は朝はのんびり過ごしたい派であり、そんなハイテンションで1日乗り切ろうみたいなノリはお断りだ。
「あぁ、相変わらずテンション高いな。ちょっと静かにしてくんない?」
「なんだよ。今日は一段とテンション低いな~。あっ、例のあの日か?そうだろ?な?な?」
うぜぇよぉ・・・。思いっきり肩を殴ってまずはこの異常な距離から正す。そして次にそのしっかり整えられた髪型をグチャグチャに崩してやった。
「あぁ!?おまっ・・・、今日終業式だから気合い入れて準備したのに・・・。くっそ覚えとけノブ!!」
「そんな気力があったら覚えとく」
俺の返事が聞こえたのかどうかは分からない。秀翔は鞄を背負い直して学校への道を走っていった。
「朝から元気な奴だなぁ」
「それはノブ君がイジメるからでしょ。可哀想な秀ちゃん・・・」
また友人の登場だった。今度は中学時代からの友人。中学では3年間一緒だった
まぁなんとなく察した人もいるだろう。あいつとこいつは付き合っている。
秀翔はまだわかる。見た目は茶髪でヤンチャだがクラスの中心で正直モテる。腹立たしいことに俺の目の前でバレンタインに本命チョコなるものを貰っていたほどだ。
あの時の尋常じゃなく気まずい雰囲気を男子全員にあじあわせてやりたい。
しかし、綾奈はなんでだろうな。別に普通にカワイイんだがこれまでずっと恋人無しでここまで来たからなのか、同類だと思っていたのかも知れない。
2人が付き合い始めたと聞いた時確かにショックではあったが、それは単なる妬みとか嫉みとかそんな感情だったのだと思う。
「可哀想なもんかよ。あの夢を見る度にモヤモヤした気分で登校し、それを面白おかしくイジられる俺の方が可哀想だわ」
「・・・全然?」
「あ?」
俺は綺麗に整えられた綾奈のポニーテールに手を伸ばす。
「ちょっと!?乙女の命ともいえる大事な髪に何しようとしているのかな!?」
「お前の大好きな秀翔と同じ目に遭わせてやるだけだ。大人しく受け入れやがれ」
キャー、といいながら逃げる綾奈には残念ながら追いつけない。現役陸上部の部長に勝てるほどこちとら運動していないんだ。
そしてちょっと息を整えているうちに俺の視界からは消えていた。きっと秀翔を追いかけていったのだろう。
それから数人同じクラスの奴と出会って簡単に挨拶をしておいた。
あとは部活の勧誘もだ。残念だが俺の春休みの予定は埋まっている。諦めろ。
校門が近くになると人が増えてくる。しかし理由はそれだけでは無い。
未だにここの生徒が慣れることの無い景色。
この県立五月丘高校の最強美少女(同校男子調べ)こと、
もう2年も終わることだというのに、未だにこの方の登校は人の目を引く。
「みなさん、おはようございます」
彼女がそう挨拶しただけで失神するバカがいるほどに彼女は人気者なのだ。
ただし俺も失神までしないもののバカの1人なのだと思う。
この学校に入学したとき、偶然にも同じクラスだった。教室に入ったとき、窓際の席に座っていた彼女は外の桜と雲一つ無い蒼い空とが相まって一枚の絵になっていた。
俺はそんな彼女に憧れを抱いてしまったのだ。好きなんてそんな低俗なものでは無い。見惚れてしまったのだ。
先のことなど分からないが、きっとこんな感情を抱くのはこれが最初で最後だと思う。
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