『花の命は結構長い』なんてよけいなお世話

ジュン

第1話

「あなた、結局、仕事と結婚どっち取るの?」

桐島さんは、強い口調でそう言った。

「仕事かなあ」

美鈴はそう言った。

「そう。結婚願望はないわけ?」

「まったくないわけじゃないんだけど……」

美鈴は続けて言った。

「仕事を辞めて家庭に入るとするじゃない。そうすると、育児が一段落した後で復職したくても現実には難しいのよね」

桐島さんは言う。

「そうね。女性って、『家』を守ってほしい。子どもを愛する『聖母』でいてほしい。仕事で疲れた男を『癒して』ほしい。つまり、男がもぐり込む『袋』でいてほしい。つまり」

「『おふくろ』でいてほしい。ってこと」

美鈴が結語を言う。

桐島さんは言う。

「世の中じゃ、男の意識が変わってきたって言ってるけど。仕事一辺倒で家庭の責務を放り出すことが、『俺は働いているんだよ』『君や子どもを養っているんだよ』ってせりふで当たり前のことみたいになってる。休日には『家族サービス』でお出掛けに同伴してあげるとか。この考え方って、根本的に変わってないんじゃない?」

「変わってないと思う。『理解のある夫』を『演じられる』男は本当に増えた気がする」

「男が女に期待してるのは、『甘えさせてほしい』、『お母さんになってほしい』ってこと。だから、自分の妻を『ママ』って呼んで、はばからないのよね」

「男からも反論があるのよ。『女性は結局、「男は経済力だ」って言うじゃないか』って」

「それをあなたはどう思うの?」

「女が男に経済力を求めるのは事実だと思うわ。ただ、これには訳があるの。同じ仕事をしても、賃金差別があるし、妊娠・出産の仕事は男は代われないでしょ。だから、仕事で女性が不利な境遇に置かれてる、その『不足分』を男に『補完』してもらわないと生活できないのよ」

「そうね。世の中の表面的な部分は、『時代は女性の時代になった』なんてオヤジたちが吹聴してるけど、社会の構造から見れば、未だに男優位の社会だものね」

「女が男に望んでいるのは、『頑張りすぎないでほしい』ってこと」

「どういうこと?」

「つまり、男は『頑張る』から女に『慰安してほしい』って構図ができてしまってる。女性が、慰安してほしいと思われないほど、男が頑張らないようになってほしいのよ。ついでに言うと、頑張らないことで終わらせられなかった仕事を女性に回してくれていいのよ。もちろん、給料は同額で」

桐島さんは言う。

「仕事を男女が同じように担うとしたら、家事・育児はどうするの?」

「それって難しいのよね。たとえば、家事の分担だとして……」

美鈴は続けて言う。

「洗濯なんて、やっぱり女性がやるものってなりやすい。だって、夫といえど、異性に汚れた下着とか見られたくないわけよね」

「そうね(笑)」

「食事だって女性は、うまい不味いの前にカロリーが気になるものじゃない?そういうのって、男性主導でやられても困るのよね」

「じゃあ、仕事と家事を男女で平等に分担することを望んでもいないの?」

「桐島さんも女なんだからわかるでしょう(笑)」

「まあ、ね(笑)」

「女って、仕事も家事・育児も男女『平等』を望んではいないの。男女『公平』を望んでいるのよ」


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『花の命は結構長い』なんてよけいなお世話 ジュン @mizukubo

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