第62話 仲間たち(4)




「いっやぁ、大収穫でしたな!」


 三人はほくほく顔だった。


 結局、近くに見えた鹿と馬二頭も難なく捕らえることが出来た。


 イッサさんの威圧で一瞬動きを止めた獲物の上に、僕が《突貫LV4》と《空中戦LV5》で跳び乗り横に転ばせる。


 左から追いつくソージ君が足を噛んで逃げさせず、右から来たヒジカが首と胴を分断する。


 その要領ですべて上手くいき、簡単に狩ることが出来た。


 馬二頭は、僕が一頭目を転ばせてすぐもう一頭に跳び乗った。


 太腿で《破砕牙LV4》をやるつもりでちょっと締めてやると、大人しくなり《騎乗》なんてスキルを手に入れることができた。


 従順な使い魔になってもらえないかとも思ったが、その気配はなかった。恐怖で従わせているようなものだし、僕にはそういう適性がないのだろう。


 僕が降りればすぐに逃げ出しそうなので、乗りつつ獲物を僕の腰の後ろに載せて運搬させている。


『……ちょ、……も、……無……リ』


『拙者も……、もう、動けませ、んぞ……』


 そう言ってソージ君の体力とイッサさんのスタミナが尽きた。一人称拙者。それにこれ以上狩っても運ぶのに苦労しそうなので、帰ることにした。


「……はぁ、いつもは、十回に一回、ぜぇ、成功すれば……いい方なのに、今回は、ぜぇ、全部成功、はぁ、でした……ね」


「一人の加入が、ずいぶんと大きかったですなぁ!」


 そう言って、みんなが騎上の僕を見る。とりあえずはにかんだように笑っておこう。元々の体力がないからか、ソージ君は息が戻らない。


「僕も、役に立てて嬉しかった」


 それから、何だかお互いを褒め合うような流れになってしまった。


 嬉しいが、照れ臭い。けれども楽しい時間だった。


 聞けば、ソージ君の速度上昇もイッサさんの異様な圧も、最近身に付いたものらしい。年齢的な成長だろうと思っているが、それにしても急に身に付いたと。


 ……その始まりはきっと、ヒジカが勇者になった時だ。惜しいどころか、もったいない。


 相棒との暮らしでも経験したが、進化や成長、スキルは強い思いに応える。


 年下の、幼馴染の弟分が魔物と戦いに行く。それを守るのだと、イッサさんは決意したのだろう。そして、慕う年上の幼馴染のために、役に立とうと思って才能を開花させたソージ君。


 何だ。二人とも勇者ヒジカ・トージスに付いていこうと、とっくに決めているんじゃないか。


 そう思って、小さく笑った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る