第47話 目途




「うぉっ!?」


 慌てて咥えていた熊の頭を離す。気付くと俺の身体も燃え出している。


 見つめる相手を燃やす《邪眼》でも持っているのだろうか。何それめっちゃ欲しい。


 欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。



    《身体操作》《瞬発LV9》《突貫LV4》《破砕牙LV3》

    《締め付けるLV3》《破砕牙LV3》×4



 欲望から、全力で攻撃した。


 ……ふむ、大蛇にはオーバーキルだったようだ。《邪眼》に特化していたようで、反応も動きも鈍かった。物理的な攻撃への防御も弱かったのだろう。


《突貫LV4》で例の如く止まれなかったが、燃えている俺の炎が木の魔物に燃え移り、炎上した。


 邪眼の蛇を《丸呑みLV4》すると『てれれってってってー』の天の声が聞こえたので、燃えていた皮を脱皮する。


 燃えていない木の魔物数匹から取り囲まれた。枝葉で殴って来る。群れへと突っ込んでしまったようだ。


「お、なかなか痛い」


 鱗のある部位で受けているのでダメージは少ないが、腹の部分を殴られればそこそこのダメージを受けそうだ。


 尖った枝で刺してくる者もいた。そいつを中心の頭で《握撃LV3》したが、驚くことに噛み切れなかった。噛み切れないアスパラみたいだと、前世の知識が訴えてくる。食物繊維ではなく、セルロースだろうけど。


 仕方ないので他の頭の《破砕牙LV3》×4で咥えた上げて地から離し、周囲を《恐怖の邪眼LV2》で睨めまわす。


 動きを止めたところで、身体を浮かせて周囲を尾で《薙ぎ払うLV4》。


 使用頻度が少なくスキル熟練度も低いからか、どうしても尾での攻撃は牙系の攻撃より弱い。牽制や距離を取ること目的にしか、ほとんど使えない。


 力が入ったからか、咥えていた木の魔物は死んだ。吐き出すと、他の木の魔物が逃げ出した。


 あまり美味そうではなかったので追わず、倒した一本を咥えなおして相棒の元へ戻る。


 戻ると、残りは相棒が倒していた。


 鳥や小型恐竜のすべてに蜘蛛の巣がかかり、地に倒れている。


 ピクピク痙攣している者がいるので、相棒の基本戦術である《蜘蛛巣》で動きを封じての《毒牙》だろう。


 俺の姿に気が付き、あいぼー、と声をかけてくる。


「驚いたわ。こいつら《蜘蛛巣》破りおった」


「へぇ?」


 相棒の《蜘蛛巣》は俺でも破るのに時間がかかる。聞けば、鳥は飛行してきた勢いで破り、小型恐竜は力づくで破ったそうだ。


 それでも傷一つ追っていないということは、何とか破れた、程度だったのだろうけれど。


 さてさて、お食事タイムである。


 それぞれ自分が倒したものを食ったが、鳥も一匹食った。どうやら《薙ぎ払うLV4》で首の骨を折っていたらしい。


 尾での攻撃も強くなったのだと、感慨深くなりつつ味わった。


「「うっま!」」


 濃厚な味である。鳥はそのまま上質な鶏肉だし、木は美味い野菜。照り焼きとドレッシングとか欲しいね。


 何より熊だ。元々の肉も美味いのだろうが、邪眼の蛇が焼いてくれたおかげで初めて焼いた肉を食えた。人型でないから、咀嚼して味わえないのが残念。


 絶対に欲しいと思っていたが、あの燃やす邪眼は何としても手に入れなければならない。そう決意を新たにした。調理法としてもそうだが、何よりカッケェし。


 ……それが、とりあえず今この森で得る、大きな目的になるだろう。


 さっき飛んだ時。南へ向かえって森を出れば、そう遠くない距離に町があった。北は果てしない森だった。


 ここで一度、森を出て人と交わるべきではないか? そんな考えが、頭をチラついている。


 おそらくこの第六層(と《南の森の知恵LV2》が言っていた)にも、俺を殺すレベルの敵はいないだろう。


 相棒といるなら、尚更だ。俺達はただでさえ強いし、最低限注意深く進む。


 そして二人ともが《消化吸収能力》を持っている。これから進むにつれ、より良いスキルを獲得し強化していくだろう。


 強くなっていき、あの遠目に見える建造物に到着し、より高位の魔物になる。


 悪くないとも思う。


 ただ、人間の生も面白そうなのだ。《勇者》として生きる可能性があるなら、尚更。


「あいぼー、これ食ってみぃ?」


 そう言って、相棒が恐竜肉を差し出す。


「何これめっちゃ美味い」


 何これ、めっちゃ美味い。


 せやろーと、相棒が俺に微笑む。


 美味いと思うと共に、調理したらもっと美味いんだろうな、という思いが離れない。


 美徳を持った相棒は《存在進化》で、人型のアルケニーになった。次の《存在進化》の後、俺はどうしているだろう。



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