第33話《義ある多頭の邪蛇》




 目が覚めた。


 やはり最初に、強烈な空腹を感じた。


 前の《存在進化》後も、空腹感は感じたが、どうやら恒例のものらしい。


「うーん」

「うーん」

「うーん」

「うーん」

「うーん」


 背伸び(といっていいのか微妙だが)をしてみると、多くの背骨がぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃぱきゃ、と音がする。


 何か音多くね?


 なんか視界も気持ち悪いし。


 後ろを振り返ろうとすると、横に蛇がいた。


「うおっ!」

「うおっ!」

「うおっ!」

「うおっ!」

「?」


 敵かと思い、後ろにステップバックする。


 しかし蛇は付いてくる。俺は俺で左端で引っ張られる。


 馬鹿みたいに左右を見ると、右にも蛇がいた。いなかった。


 混乱したまま左右を見たり前後を見たり、前後不覚に右往左往して、ようやく理解した。



    《並列思考LV1》が《並列思考LV2》に上がった!

    《並列思考LV2》が《並列思考LV3》に上がった!

    《計算》が《演算処理LV1》に進化した!



 理解してなお、うまく動けなかった。


 確かに《多頭の邪蛇》を選んだ。眠すぎて多頭になればどうなるか想像もできなかったが、こうなるのかよ。


「はぁ」

「はぁ」

「はぁ」

「はぁ」

「はぁ」


 全部の口からため息を吐く。


 ウゼェ。いや俺なんだけど。




    《並列思考LV3》が《並列思考LV4》に上がった!

    《並列思考LV4》が《並列思考LV5》に上がった!

    《演算処理LV1》が《演算処理LV2》に上がった!



 さっきから《並列思考》がものスゲぇ勢いで上がっている。


 視界は慣れてきたのか、繋がってきた。


 視覚情報が一気に増えたので気持ち悪かったが、統合されてきた。


 思えば今までも、右目と左目でも別の目だが問題なく生きているのだ。二だった目が十になっただけだ。そう考えよ。うん。


 視界が離れすぎると、見えない空間ができるのにはまだ少し慣れないが。


 そもそも脳が五個増えているのが問題でもありそうなのだが、考えないようにしよう。考えないようにしよう、うん……。



    《並列思考LV5》が《並列思考LV6》に上がった!

    《空中戦LV2》が《空中戦LV3》に上がった!



 慣れてきたというか、ガンガン上がっている《並列思考》のおかげだろう。


 相棒はまだ寝ているが、姿はすでに変わっている。


 ていうか変わりすぎじゃね? 俺がなりたい姿に変わりつつあって、ちょっと羨ましいんだけど。


 とりあえず恒例のー、自分を《解析LV6》をしてみよう。




  《義ある多頭たとう邪蛇じゃじゃ ♂》

   ステータス

    LV 1

     HP  6000

     MP   200

     POW  450

     DEF  300

     SPD  250

     MAG  150

     INT  400

     LUC  ???


   状態

    空腹


   スキル

   《邪眼LV9》↑1up

   《瞬発LV8》

   《突貫LV3》

   《破砕牙LV1》

   《噛み千切るLV8》

   《締め付けるLV1》

   《突き刺すLV1》

   《蛇毒牙LV1》

   《薙ぎ払うLV2》

   《隠密LV6》

   《稲妻蹴り》

   《解析LV7》↑1up

   《丸呑みLV4》↑1up

   《演算処理LV3》↑1up

   《眼力LV7》

   《威嚇LV7》↑1up

   《暗視LV5》↑2up

   《引っ掻きLV2》

   《察知LV6》↑1up

   《体液操作LV2》

   《思考加速LV3》

   《並列思考LV5》

   《念話LV5》

   《空中戦LV3》

   《統率者LV1》



    パッシブSKILL

     《先見の明》

     《勇者適正》

     《戦闘の天才》

     《武器技能適正》

     《魔術技能適正》

     《輝く英雄性》

     《精力絶倫》

     《第三の目》

     《観察力》

     《器用な指先》

     《滑かな舌》

     《淫蕩の血》

     《身体操作》

     《感情操作》

     《逆境〇》

     《絶対の復讐》

     《陽の当らぬ闇》

     《武道の素養》

     《驚異の集中力》

     《恵体》

     《粘着耐性LV7》

     《恐怖耐性LV4》

     《毒耐性LV8》

     《痛覚軽減LV5》

     《苦痛耐性LV5》

     《南の森の知恵LV1》



    成長スキル

     《神の約束した克服》

     《焦土の吸収力》

     《果て無き成長》

     《無限の度量》

     《消化吸収能力LV5》


    パーティスキル

     《はさみ撃ち》


   称号

   《分析者》

   《抗う者》

   《切ない旅人》

   《覆う者》

   《情深き者》

   《報いる者》

   《深き闇の者》

   《神を欺く者》

   《善悪に愛されし者》

   《武を愛する者》

   《与えられた者ギフテッド》

   《奪われし者》

   《翻弄されぬ者》

   《転生者》

   《共食い》



   復讐対象設定

    なし




 ふむふむ。


 透明度のあるステータスを見ながら5つの頭で、ふむふむと頷く。


 やはりちょこちょこと上がっているが《邪眼の大蛇》の時に得た《邪眼》のような、新しいスキルはないようだ。


 それよりも、気になることがある。


「《義ある多頭の邪蛇》ねぇ……。義ある?」


 何だこれ、と注意深く見てみると《義》について詳細が表示された。



   義:《美徳》の一。人としての正しい道



「ほぅ?」

「ほぅ?」

「ほぅ?」

「ほぅ?」

「ほぅ?」


 ウゼェ。いや俺なんだけど。


 わかるんだが、蛇の俺に向かって『人として』とか言われても……。


 正しい道を『邪な蛇』に言われても……、ねぇ?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る